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「あこがれの祥啓―啓書記の幻影と実像―」神奈川県立歴史博物館

「あこがれの祥啓―啓書記の幻影と実像―」(神奈川県立歴史博物館)は、室町時代の禅宗と美術の受容のあり方を知ることが出来ました。大必見の展覧会でした。

祥啓というのは、雪舟とだいたい同世代の室町中後期の鎌倉の寺院に務める画家です。
室町時代に、中国からコンテンポラリーアートとして、禅宗絵画が入ってきました。もちろん最新の科学である禅宗そのものとです。
抽象絵画である 水墨画が有名のため モノクロの水墨のみが入ってきたと思いがちです。しかし 実際にはとてもカラフルでかつ写実的な色彩を持つ絵画もほぼ一緒に入ってきたのです。

導入の説明が良かったです。
1 夏珪 輪郭をとり、かっちりとした印象 真体
2 牧谿 墨を面的に用いて対象を描き出す 行体
3 玉潤 墨を紙に注ぐように用いて時に抽象画にも見える 草体

祥啓が重視したのが写実の真体の夏珪調だった。ただ、抽象的な墨の技法(牧谿風、行体)も同時に日本に入ってきたので、どちらかのみの技法を表現上の二者択一するというのも、むしろ不自然なので、新しい写実的なカラー絵画と新しい抽象的な墨の絵画の両方を取り入れたと考えられるわけですね。

このうち、新たな墨表現の抽象性がさらに深化した玉潤風(草体)が雪舟によって大成されたのではないかと感じました。雪舟ももともとはカラー絵画を得意としてましたよね。

もちろんカラー写実的絵画が途絶えたわけではなく、狩野派がそのメインストリームとして、写実的カラー絵画をずっと描き続けたわけです。

写実と抽象、これが鎌倉以降の日本の美の歴史のキーワードかもしれません。

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