朝日新聞が今日(2018/12/05)の朝刊で訂正を出していました。
その間違え方がこれまでの常識ではありえないため逆に興味を持ち、初めて元の記事も読みました。
アフリカから地中海を渡る移民・難民が押し寄せるスペイン南部アンダルシアの州議選(定数109)で2日、「不法移民の取り締まり強化」を掲げる新興右翼政党ボックス(VOX)が同国の州議会で初の議席となる1… 「反移民」右翼、欧州を席巻 寛容な姿勢のスペインでも:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル |
(もう修正済みです)
移民を進める与党の社会労働党が敗北したと言う記事です。
訂正前は
「社会」「労働」党なのに右派と書いてあったのです。
普通は何も考えずに党名から「左派」と思うと思います。
もともと右翼、左翼は、フランス革命後の議会の席が、
憲法を立てて王権を縛る穏健な革命を目指す「王党派」が右翼。
王政を配して急進的な革命を目指す「共和派」が左翼だったように記憶してます。
いずれも新しい勢力で、改革を目指すことは同じです。
王党派は、王族や貴族ら中世の既得権益を否定して工業化で社会的なステータスが上がった新興勢力、いわゆるブルジョア。
共和派は、実は王族や貴族からの支配は脱却して、経済的にブルジョアに隷属させられていた労働者や解放奴隷の都市住民。
のはずですが、ややこしいのは、中世の既得権益で生きてきた教会系の知識人(ヨーロッパには教会系の知識人しかいませんでしたが)や手工業などの技術者も後者サイドになるんですね。王族や貴族にはもはや依存していないけど、工業化によって既得権益は奪われる。
中世を否定する近代の新興勢力。右派
近代の新興勢力によって新たに支配されたさらなる新興勢力。左派
という住み分けになります。ただいずれも改革派で保守主義ではありません。当時は。
しかし、ヨーロッパではこの両者の戦いによる長く陰惨な革命と戦争を繰り広げた疲れから、現在まで両者はすっかり改革派ではなく、保守主義の右派と保守主義の左派になっています。
どの国も、日本も、西側国家は、冷戦中に、本物の超過激革命派の共産主義から身を守るため、
右派が政権を取れば、過剰に左派つまり工場労働者など労働組合員を優遇し、
左派が政権を取れば、過剰に右派つまり経営者などを優遇してきたためです。
経営者でも、労働者でも、将来は安泰です。ソ連様様。
冷戦時代に組合員だった人たちはもはや働かない年齢になり、年金で暮らしています。この層の人口も増えるばかり。
しかし、西側諸国の人柱だったソ連がなくなると、若い世代は起業して経営者を目指しても、雇用されて労働者になっても、既得権益の高齢者が邪魔をするようになります。
右派も邪魔をするし、左派も邪魔をします。
なぜヨーロッパの右派も左派も移民を進めるかというと、自分が働きたくない老人だからという理由しかありません。リベラルとか自由とか多様性とか世界平和とか関係ないです。
そしてようやく本題ですが、なぜ朝日新聞が「社会労働党」を右派と思わず書いてしまったのか。
これは全くの想像ですが、現地の実感として、右派(保守)、左派(改革派)のようなかつてのイメージと実態が結びつかなくなっているのではないでしょうか?
特派員は、東京から「右派か左派か。悪い右翼がのさばっている危険性を強調して」みたいなイデオロギーで染めるよう指示を受けたものの、取材している人は、どうもその区分けがしっくりこずに、あまりそこにこだわらず誤って書いてしまったのかもしれないと想像しています。
パリ暴動も、イデオロギー上の右派か左派で語ることは不可能なようです。
実は、今回の訂正は、大きな時代の変化を示しているのかもしれません。