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ケマンとは?仏に捧げる永遠に枯れない花束!国宝 牛皮華鬘(けまん) 東寺旧蔵 奈良国立博物館蔵

国宝 迦陵頻伽文華鬘 牛皮彩色 平安時代(11世紀)奈良国立博物館

国宝『牛皮華鬘ごひけまん』平安時代 11世紀 奈良国立博物館蔵

コンテンツ

華鬘(けまん)とは?

牛の皮を素材にした「華鬘(けまん)」です。
動物の皮が1000年も残っている事にまず驚かされます。工芸として国宝に指定されていますが、”絵画”としてもすばらしいです。京都の教王護国寺(東寺)旧蔵で、現在は奈良博が所蔵しています。

花の首飾りが元々

仏の世界のお花畑を表現した、いってみればフラワーアレンジメントの一種です。「花の首飾り」を意味するインドのサンスクリット語の倶蘇摩摩羅(Kusuma-mālā、クスマ・マラ)が語源です。聖なるものや人にお花を供えるというシンプルな人類の欲求から生まれた祈りの道具です。
中国や日本に到達して、団扇うちわのような形になり、花だけでなく天女や人面鳥を浮彫りで表現、仏殿の中心の内陣など仏像の前にぶら下げる装飾品「荘厳具」となりました。

生の花はしおれてしまいますが、永久に咲き続ける仏の世界の花を表現するために、金銅製、木製、玉製、そして牛皮製とさまざまな素材が使われています。国宝の華鬘では、『中尊寺金色堂堂内具』(岩手県・金色院蔵)の一部として、金銅華鬘があります。牛皮の華鬘は、部分的に残っている唐招提寺の『牛革華鬘残闕』8面(重要文化財)があります。

空海の建てた東寺にかけられていた

左が登号、右が呂号 国指定文化財等データベースより

京都市の東寺が旧蔵していた国宝「牛皮華鬘ごひけまん」は、ほぼ現存を保つ13枚と残片が残っています。
このうち2枚(登号と呂号)が渋谷区立松濤美術館の「SHIBUYAで仏教美術 奈良国立博物館コレクションより」(2022年4月9日~5月29日、牛皮華鬘の展示は5月8日まで)で展示されていました。

国指定文化財等データベースより

平面なのに油絵のように立体的に見える

厚みのある牛の皮に漆を塗り、さらに白土を下地として施します。そうして”キャンバス”化してから、絵を描くのと同じく彩色や細く切った金箔(截金きりかね)で色を着けています。
仏の世界に咲くとされる空想上の花を表す「宝相華文ほうそうげもん」や極楽浄土に住む聖なる人面鳥「迦陵頻伽かりょうびんが」(サンスクリット語の「カラビンカ(インドホトトギス)」)を、それぞれ左右対称に描いています。(呂号は宝相華文のみ)

絵の不要な部分を切り取られており、牛皮の厚みもあり、平面なのに立体的に見える効果が非常に高いことが、現物を見て実感しました。平安時代後期の密教に満ちあふれた東寺の聖なる空間を荘厳したさまが想像できました。

同展では、国宝の『辟邪へきじゃ絵』5枚が、前期3枚、後期2枚が展示されています。こちらの3枚も非常に面白く、後期も見に行く予定です。

個人的な感想

文化財指定データ(国指定文化財等データベースより)

牛皮華鬘 (ごひけまん)
員数 : 13枚
種別 : 工芸品
国 : 日本
時代 : 平安
寸法・重量 : 縦33.3~51.5  横39.1~59.7 (㎝)
品質・形状 : 八枚はそれぞれ牛皮一枚に、左右対称の迦陵頻伽と宝相華唐草を主文に、中央に総角を配して、団扇形内に切透かす。
五枚はそれぞれ宝相華唐草文を主文に、総角を中央に配して、団扇…
指定番号(登録番号) : 00221
国宝・重文区分 : 国宝
重文指定年月日 : 1902.04.17(明治35.04.17)
国宝指定年月日 : 1958.02.08(昭和33.02.08)
所在都道府県 : 奈良県
所在地 : 奈良国立博物館 奈良県奈良市登大路町50
所有者名 : 独立行政法人国立文化財機構
解説文:
13枚は、製作様式が多種で、それぞれの図様、配色、手法等は細部を異にして表現している。迦陵頻伽の描線、量感に富む宝相華文、重厚な賦彩、大らかな手法の金銅金具に施される截金など、いずれも充実した構成で見事である。また、まとまって伝えられていることは非常に重要である。(国指定文化財等データベースより

・国宝 工芸品《雑》カテゴリー (12件)
・国宝 工芸品《雑》カテゴリー 平安時代(8件)
・国宝 奈良国立博物館 13件
・国宝 奈良県 139件
・国宝 総件数 1131件(令和4年5月1日現在)
・国宝 工芸品 254件(令和4年5月1日現在)

参考文献・資料 図録『SHIBUYAで仏教美術 奈良国立博物館コレクションより』(渋谷区立松濤美術館)、『国史大辞典』(吉川弘文館)、『例文 仏教語大辞典』(小学館)

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