朝日新聞が令和史上最大の誤報をした。
令和元年7月9日のことである。
記憶が正しければ、令和はこの5月に始まったので、現時点で、令和最大の誤報ということは間違いないだろう。もちろん、これからしばらく続く令和中に、これを超える誤報も出てくるだろうが。
面白いのが、俗に「アベノセイダーズ」と揶揄される反安倍の人たちが、朝日新聞は安倍政権の情報操作で、偽の情報を掴まされた、と主張していることだ。
ハンセン病患者の家族にかつての隔離政策の賠償を国に命じた一審判決について、安倍首相は9日朝、「筆舌に尽くしがたい経験をされたご家族の皆様のご苦労をこれ以上長引かせるわけにはいかない」と述べ、控訴を見送ることを明らかにした 世紀の誤報か?陰謀か?朝日「ハンセン病訴訟控訴へ」が波紋【更新】 - アゴラ 言論プラットフォーム |
しかし、安倍政権を嫌悪する左派の人たちは、釈然としないのか、政権と敵対する朝日新聞に誤報をリークした「陰謀説」を唱え始めた。
憲法学者の南野森・九州大学教授はツイッターで、「もしかして朝日新聞だけがガセネタを摑まされた?」との仮説を示し、「一面トップのスクープが誤報ということになれば、なかなかの失態だが、これが実は政権によって仕組まれたのだとしたら怖すぎる」との受け止めを述べた。
一般人が、どう思おうと、アレだなぁと感じるだけだが、国立大の憲法を専門とする教授が陰謀論を、脊髄反射的に表明するとなると、いよいよアレだなぁと深く感じる。
源氏物語の蛍で、源氏(紫式部)は、物語論を展開する。
よきさまに言ふとては、
よきことのかぎり選り出でて、
人に従はむとては、
また
あしきさまのめづらしきことを
とり集めたる、
みなかたがたにつけたる
この世の外のことならずかし
現代語超訳)
いいことを書こうとするとその人のいい事ばかり書いて、批判しようとすると特異なことばかり集める。良くある事です。
平安時代から、(良くも悪くも)角度をつける文書は、物語つまりフィクションなのだ。
“「角度をつける」という言葉をご存じか。朝日社内の隠語だ。普通に記事を書いたら朝日では「もっと角度をつけろ」とデスクに怒られる。朝日的な主義主張を記事に盛り込むのを「角度をつける」というのだ。朝日ではこの技術は出世の条件。つまり朝日で角度のついていないものは記事と認めてもらえない。” 門田隆将 on Twitter - Twitter |
(角度をつける、は朝日新聞内の用語だそうです)
左派を慰めるためのフィクション「朝日物語」とならないように、朝日新聞は挽回してもらいたい。
【追記1】
上の訳は、与謝野晶子が以下のようにしている(青空文庫より)。うまい。
よいことを言おうとすればあくまで誇張してよいことずくめのことを書くし、また一方を引き立てるためには一方のことを極端に悪いことずくめに書く。
【追記2】
ハンセン病訴訟を巡る朝日新聞の誤報について、朝日新聞が経緯を説明している。
https://www.asahi.com/articles/ASM796VF8M79UTFK02M.html
行政的には、控訴するのが既定路線だったようで、まさに「安倍政権がまたも行政をゆがめた」(揶揄です)わけです。
控訴するのが常識的な対応だったとすれば、それをわざわざ1日早く報じる意義は、逆に比べて低い。
さらに8日夕、首相の意向を知りうる政権幹部に取材した結果、政府が控訴する方針は変わらないと判断しました。
「首相の意向を知りうる」
いや、首相の意向を取材しようよ、と思うのが、一般の感覚だと思う。
これ、もしも控訴しなかったら、「非情の安倍政権」と批判する気満々だったのでは、と疑われても仕方ない。