「第1回」が8回もある!? 118回を数える不屈の展覧会史 1946年(昭和21年)3月1日 第1回日展開幕

1946年(昭和21年)3月1日 第1回日展開幕

【3月1日 下町のとあるレトロ喫茶店で】

(エミがカウンターに置きっぱなしのチラシを手にしてサキに見せる)

エミ:「ねえサキちゃん、この日展って知ってる?」

サキ:「名前は聞いたことあるかも。昔は芸能人のだれそれが入選したってワイドショーで流れていたような。最近聞かないかも」

エミ:「年に一度、日本画・洋画・彫刻・工芸・書の5部門がある日本最大級の公募美術展なんだけど、2025年が第118回日展なのよ」

サキ:「年に1度で100回って100年以上歴史があるってこと?」

エミ:「そうなんだけど、その歴史がなかなか香ばしいの」(コーヒーを口に運ぶ)

サキ:「わけありなんだね」(ニヤリ)

エミ:「今日、3月1日って、1946年(昭和21年)に第1回日展が開幕した日なの」

サキ:「戦争が終わった次の年なんだ」

エミ:「文部省が美術展を立ち上げたのよ。焼け野原の中で”文化の灯を消すな”って気概を感じるわよね」

サキ:「かっこいい……! でもちょっと待って。第1回日展って、1946年なのに——」

(エミがスマホで日展のHPをサキに見せる)

サキ:「なにこれ、なんで第1回がいったい何回あるの!?」

「第1回」が8回ある

エミ:「あはは。これがね、日展の”大人の事情”なのよ」

サキ:「8回って……普通に意味わからないんだけど!?」

エミ:「まず歴史から整理するね。日展の前身は明治40年(1907年)に始まった文展——文部省美術展覧会よ」

サキ:「文部省がやってた官展かんてんってやつ?」

エミ:「そう! 官展、つまり国がお墨付きを与える展覧会ね。で、ここから名前が変わり続けるの。文展→帝展→新文展→日展、って」

サキ:「改名するたびに「第1回」ってカウントし直すの? それ歴史の積み重ねを捨ててない?」

エミ:「鋭い! まさにそれが問題で、2025年からついに文展からの通算カウントに戻ったのよ——第118回日展として」

サキ:「やっと……! 118回! そっちのほうが絶対かっこいいじゃん!」

昭和10年の”空白”と美術界の大混乱

エミ:「ちなみにね、この長い歴史でも展覧会が開催されなかった年は3回だけなの」

サキ:「3回? 戦争中も?」

エミ:「戦争中も終戦直前の1945年を除いて行われたわ。関東大震災の1923年も不開催。あと——昭和10年(1935年)も」

サキ:「昭和10年? 戦争でも震災でもないのに? なんで?」

エミ:「ここが面白いのよ。”挙国一致”の名のもとに帝国美術院の大改革が行われてね。展覧会の制度もガラッと変えようとしたの。でも——」

サキ:「でも?」

エミ:「美術家たちが大反発した。”反帝展運動”って呼ばれる抗議運動が相次いで、美術界が大混乱したの。その秋に予定してた展覧会を開けなくなって、翌年の春にずれ込んだのよ」

サキ:「えっ、アーティストたちが「その改革おかしい!」って怒ったってこと? なんか今っぽい……!」

エミ:「でしょ? しかもその後もごたごたが続いて、カウントがさらにぐちゃぐちゃになるの」

1936 昭和11年(春) 改組第1回帝展
1936 昭和11年(秋) 昭和11年文展
1937 昭和12年 第1回新文展

サキ:「いやー!やめて……わたしプログラマーだからこういうルールがバラバラのナンバリングを見ると、『きーっ』ってなる」(頭を抱える)

エミ:「サキちゃんがこんな動揺するなんて珍しい(クスクス)。じゃあ表にまとめると——」

サキ:「……うわぁ。見える化したらやっぱりヤバかった(笑)」

エミ:「でしょ! ”第1回”が8回あるの、もはやギャグよね」

サキ:「でもさ、逆に言えば——その度に改革しようとしてたってことでもあるよね。停滞してるって批判されながらも、ずっと続いてきたんだ」

エミ:「……サキちゃん、いいこと言う。そうなのよ。関東大震災でも、戦争でも、美術界の内輪もめでも——ほぼ途切れることなく120年続いてきた展覧会なの。終戦の翌年、1946年の3月に第1回日展を開いた人たちの意地がその根っこにあると思うのよね」

サキ:「廃墟みたいな日本で、美術展を立ち上げるか…… たしかに、それはすごい」

(しばし、しんみりとした空気)

サキ:「……2026年の第119回、見に行きたくなってきたよ」

エミ:「行きましょ。毎年秋に国立新美術館でやってるから」

サキ:「やった! 約束ね!」
(第118回は2026年6月まで全国各地を巡回中)

おまけ:プレイリスト会議

(サキがダージリンティーにレモンを絞ってから一口飲む)

サキ:「じゃあ今日もプレイリストを作ろう! 私はMrs. GREEN APPLEの『僕のこと』かなぁ」

エミ:「なんで?」

サキ:「何度リセットされても”俺はここにいる”って存在を刻もうとする感じ、日展っぽくない? 第1回を8回やっても、続けることで意味が生まれるみたいな」

エミ:「あ〜、その読み方すごく好きよ!」

サキ:「エミちゃんは?」

エミ:「Aimerの『ref:rain』にする。『まだ消えなくて』って歌詞が、廃墟の中で雨に打たれても、もう一度花を咲かせようとする、ひたむきさが1946年の第一回日展と重なって」

サキ:「きれい……! あと私、YOASOBI『群青』も入れたい。何度だって立ち上がって進んでいく感じ、ぴったりじゃん」

エミ:「完璧ね。じゃあ私はLiSAの『紅蓮華』。炎に焼かれても咲く花——大震災も戦争も改革の嵐も乗り越えた日展にはこれよ」

サキ:「燃えるぅ〜!それじゃあ、最後はヨルシカ「言って。」」

エミ:「その心は?」

サキ:「昭和10年の芸術家たちの反発が面白くて。その讃歌ということで」

エミ:「今回もいいプレイリストができたわ!」

第1回日展のプレイリスト

1. Mrs. GREEN APPLE「僕のこと」——何度リセットされても、ここに在り続けることの意地
2. Aimer「ref:rain」——廃墟の翌年、雨の中でもう一度咲かせようとした文化の灯
3. YOASOBI「群青」——混乱と対立を越えて、何度でも前へ
4. LiSA「紅蓮華」——震災・戦火・美術界の内輪もめ、すべてを乗り越えた118年
5. ヨルシカ「言って。」——改革に怒った芸術家たちの、叫びたかった本音のために

エミ:「というわけで! 3月1日は、1946年に第1回日展が開幕した日でした」

サキ:「118回も続く展覧会、かなりドラマチックだったよぉ」

エミ:「”第1回”が8回ある展覧会、世界広しといえどもなかなかないと思うわよ(笑)」

サキ:「ほんとだよ! もうそれ自体を展示してほしいよね、歴史として(笑)」

関連記事

  1. 長久2年(1041年)1月1日「和漢朗詠集」を撰じた藤原公任死す

  2. 天喜元年(1053年)3月4日 藤原頼通、10円玉でおなじみの平等院阿弥陀堂(近世以降「平等院鳳凰堂」と呼ばれる)を供養

  3. 文久元年(1861年)3月5日 浮世絵師歌川国芳が65歳で死去

  4. 推古元年(593年)1月15日 法興寺(飛鳥寺)の塔の心礎に仏舎利を納める

  5. 天平宝字5年(761年)1月21日 筑紫観世音寺、下野薬師寺に戒壇を建立

  6. 寛永16年(1639年)2月1日 『三河物語』の大久保彦左衛門80歳で死去

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

目次