【べらぼう最終回】写楽の正体は「200年越しのドッキリ」!? 屁と拍子木で締めた、最高に粋な夢噺

【日曜日の午後9時(「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」最終回放送直後) エミの家のリビングで】

​(テレビの前で、エミとサキが呆然としながらも、顔をくしゃくしゃにして笑っている。テーブルには空になったティッシュ箱と、サキが持ってきた日本酒「蔦重」の瓶。下戸のエミはグラスに注ぐだけして匂いだけ楽しみ、手元の牛乳を飲んでいる。実はお酒に強いサキは、ドラマを見ながら手酌で杯を重ねている)

​サキ:「うぅ……ぐすっ……最高だったぁ……!なんなの最後! 『屁』で呼び戻して、結局『拍子木』で終わるとか! 笑いすぎて泣いて、泣きすぎて笑ったよぉ!」

エミ:(目元を拭いながら、日本酒をかいでから、牛乳を一口)「本当にいろんな意味で『べらぼう』な最後だったわね。あの臨終のシーン、史実では『正午に死ぬ』って宣言したのに死にきれなくて、『人生は終わったはずなのに、拍子木が鳴らない。ずいぶん遅いな』ってぼやいたエピソードが元ネタなんだけど……」

サキ:「えっ、あれ実話なの!?」

エミ:「墓碑銘に残ってるのよ。それを脚本の森下佳子先生は、『仲間たちが「屁」「屁」って大声でうるさいから拍子木が聞こえないから死ねなかった』っていう、最高にバカバカしくて愛おしいオチに昇華させたんじゃないかしら。
これぞ『書と笑いで世を耕す』蔦重の人生そのものよ。最後の『カンカン!』っていう視聴者にしか聞こえない設定の拍子木の音、あれで私たちの夢噺(ゆめばなし)も幕引きってわけね……粋だわぁ」

サキ:「うんうん、もうロスがヤバいよぉ……。あ、でもエミちゃん! それより何より、私が叫びたいのは『写楽』のことだよ!」

エミ:「(ニヤリとして)お、来たわね」

サキ:「先々週エミちゃんが言ってたこと、全部当たってたじゃん!
『斎藤十郎兵衛説』を無視したんじゃなくて、『斎藤十郎兵衛説そのものを蔦重が仕込んだ』ってことだったんでしょ!?
アナグラム(東洲斎写楽 → 斎藤十郎兵衛)まで使って、『後の世でこいつが正体だと思われるように』って……! すごい、すごすぎるよエミちゃん! 完全予言的中じゃん!

【べらぼう】写楽の正体は能楽者か?蔦重の友達の集合体か?

エミ:「(フフンと鼻を鳴らし、牛乳の入ったグラスを揺らす)
まあね。私の歴史プロファイリングにかかれば、この程度の脚本の『遊び』を見抜くのは造作もないことよ。
歴史探偵としての『視座』が違うと言ったでしょう? 表面的な史実に囚われず、クリエイターの意図を読む。これができるのが私なのよ」

サキ:「うんうん! さすがエミちゃん! かっこいい!」

エミ:「それに引き換え、先々週『史実と違う!』って顔を真っ赤にして批判してた連中ときたら……。
今頃どんな顔してるのかしらね? 『最新説を反映してない』んじゃなくて、『最新説さえも物語の一部に取り込んで、さらにその先を描いた』のよ。
彼らには『木を見て森を見ず』って言葉を贈ってあげたいわね。いや、木すら見えてないのかしら? 蔦重と森下佳子という200年の時をこえたトリックスターが仕掛けた罠にまんまと引っかかったピエロってわけよ」

サキ:「あはは、そうだね」

エミ:「……あ、私今ちょっと言い過ぎてる自覚はあるんだけどね。大体ね、歴史を楽しむ資格がないのよ、ああいう手合いは。自分の知ってる教科書的な知識と違うからって、すぐ『考証ミス』だの『改悪』だの騒ぎ立てて。想像力の欠如も甚だしいわ。
クリエイターへのリスペクトがあれば、『なぜこう描いたのか?』を考えるはずでしょう? それを放棄してマウント取った気になってるなんて、知性の敗北よ。野暮の極み!
ああいう『正解』しか愛せない人間が、歴史コンテンツを衰退させるのよ。猛省してほしいわね、本当に!」

サキ:「…………」
(笑顔のまま、静かに日本酒『蔦重』のグラスをテーブルに置く)

エミ:「……ん? 何よサキちゃん。私たち勝ったんだから、もっと言ってやっていいのよ?彼らみたいな浅薄な知識自慢が、大河ドラマをつまらなく……」

サキ:「…………」(無言で、しかし真っ直ぐな瞳でエミを見つめる)

エミ:「……えっ。あ、あれ? サキちゃん? どうしたの、そんな急にスンッとした顔して。ハッ!」(あわてて手で口を押える)

サキ:「……エミちゃん」

エミ:「は、はい」

サキ:「『野暮の極み』って、誰のこと?」

エミ:「えっ、マウントとって写楽の描写を批判してた人たち……?」

サキ:「終わったドラマの余韻に浸るより先に、勝った負けたでマウント取り返してる今のエミちゃんは、粋なの?

エミ:「っ……!!」
(身体をこれ以上ないくらいに縮める)

サキ:「蔦重は『笑いで世を耕す』んでしょ? 毒で他人を腐してどうすんの」

エミ:「ご、ごめんなさい……!わ、私としたことが、一番『野暮』で『べらぼう』なことしてたわ……!
知識に溺れて、品性をドブに捨ててた……うぅ、穴があったら入りたい……!」

サキ:(ふわりと表情を緩め、小さくなったエミの背中を優しく撫でる)
「ふふ。……まあ、そういう残念なところも、エミちゃんらしいけどね」

エミ:「うぅ……サキちゃん……反省してますぅ……」

サキ:(頭の中は百科事典みたいに完璧なのに、すぐ調子に乗ってポンコツになるんだから。でも大丈夫。私がいる時は、ちゃんとブレーキ踏んであげる。だからエミちゃんは、安心してアクセル全開でオタクしてていいからね)
「はいはい。じゃあ気を取り直して、批判勢のことなんて忘れて、私たちだけの『夢噺』しよっ!」

エミ:「うん……! (小声で)……サキちゃんの手、あったかい……」

サキ:「ん? なんか言った?」

エミ:「な、なんでもないわよ! ほら、もう一回頭から再生するわよ!」

サキ:「いいよ、再生しなくても、覚えているもん。それよりちょっと眠くなっちゃった。感想長くなりそうだし、今夜泊まっていいかな?」

エミ:「あわわわ…眠くなったらベッド使っていいよ。私はソファーで寝るからっ!」

サキ:「男と女じゃないんだから、一緒のベッドで寝ればいいじゃん。あったかいよ」

エミ:「うん。そうだね。どっちかが寝るまで夢語りしよっか」

サキ:「まずは、一橋治済がまさかの逃亡からの電撃!横に立っていたのは平賀源内だよね。ということは…」

エミ: 「エレキテルよ! あれは間違いなく源内のエレキテルによる天罰! それから、次の場面では……」
(夜はふけ、二人の「べらぼう」な夢噺は、拍子木の音が聞こえるまで終わらないのであった……)

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