【2026年11月5日(木) オフィス街のカフェ 朝】
エミ:「今週は文化財保護強調週間。今日は文化財について耳の痛いニュースもあるわよ。トップは、名古屋城の木造の天守で、バリアフリーの方針を決めるのが来年度に先送りになったっていう話ね」
サキ:「名古屋城の木造復元って、ずっと話題になってるやつだよね」
エミ:「いつの間にか、あとで始まった広島城の木造復元の検討のほうが進んでいるのよね。ここまできたら納得のいく形で復元してほしいわ」
1 名古屋城天守の木造復元、バリアフリー方針のとりまとめを来年度へ先送り
サキ:「で、今回は何が決まらなかったの?」
エミ:「名古屋市が11月4日に、障害者団体や子育て支援団体の代表の人たちとの会合で、木造天守のバリアフリー方針のとりまとめを、予定していた2027年2月から『来年度中』に延ばすって説明したんですって」
サキ:「バリアフリーって、エレベーターをどこまで付けるかって話?」
エミ:「そうなの。市は、垂直に昇り降りする設備を、物理的には最上階まで付けられるとしているんだけど、文化的な観点から、つまりお城としての景観ってことね、何階まで付けるのがいいのかをまだ決めかねているみたいね」
サキ:「木造で昔どおりに建てるのと、誰でも上がれるようにするのを両立させるのは、設計としてかなり難しいと思うよ」
エミ:「参加した人からは、車いすが入りきらなくて昇降設備を使えない人への対応や、災害のときの避難の方法も考えてほしいっていう意見が出たそうよ」
サキ:「方針が決まらないと、工事も始まらないんだよね?」
エミ:「バリアフリーだけで工事が始まらないってわけじゃないの。名古屋城は天守閣を先に閉めてしまってから問題が次々に出てきて、着工の見通しはなかなか立たないのよ。事業費も、当初の上限だった505億円をもう上回る見通しなんですって」
サキ:「505億円でも大きいのに……。最近のインフレを考えると1000億円規模になっちゃうかも。名古屋城の天守にまた上れる日は、まだ先になりそうだね」
出典:FNN(東海テレビ)/テレビ愛知/NHK/公式:名古屋城 天守閣整備事業におけるバリアフリー
2 岩手・山田町の房の沢古墳群の県文化財、刀や馬具など5点に破損 さびによる経年劣化か
サキ:「房の沢古墳群って、どこの古墳?」
エミ:「私も知らなかったけど、三陸海岸沿いの岩手県山田町みたいね。7世紀から8世紀、古墳時代の終わりから奈良時代にかけての古墳群なんですって。三陸縦貫自動車道の工事に合わせて1996年から97年に発掘されて、出土品の228点が県の文化財に指定されているの」
サキ:「その出土品が壊れちゃったの?」
エミ:「刀や馬具、鏃など5点に、破損や亀裂が見つかったそうよ。さびで腐食したのが原因とみられているの。見つかったのは去年6月の点検で、今年4月から修理が始まっていて、来年3月末に終わる予定なんですって」
サキ:「鉄は一度さびが始まると、中から進んでいくからね。保存処理をしても、湿気や塩分が少し残っていると、何十年もかけてじわじわ進むことがあると思うよ」
エミ:「県の文化財課長も『保存処理は適切に行われていた』と取材に話しているようね。町の教育委員会は専門の業者に修理を頼んで、費用は県の補助金でまかなうそうよ」
サキ:「ちゃんと処理していても傷むんだ。出土品は、掘り出したあとも管理が大変なんだね」
エミ:「知名度の低い遺跡の出土品。これからも各地でこういう話はでてくると思うの。簡単な解決策は浮かばないけど」
出典:読売新聞
3 長崎の国宝・崇福寺などで電気設備を点検、11月5日は国宝・大浦天主堂など 文化財保護強調週間
サキ:「さっき言っていた文化財保護強調週間。てか長っ!舌かみそうだよ」
エミ:「毎年11月1日から7日までの1週間なのよね」
サキ:「このニュースは長崎だね。点検ってなにを調べたの?」
エミ:「漏電なんかによる火事から文化財を守るために、九州電気保安協会の職員さんたち9人が、長崎市の清水寺や国宝の崇福寺など7つの施設で、漏電がないか、火災報知器がちゃんと鳴るかを確かめたんですって」
サキ:「長崎にも清水寺があるんだ。崇福寺は国宝なんだね」
エミ:「そう、崇福寺は黄檗宗のお寺で、建物も中国風なのよ。文化財保護強調週間に合わせた点検で、1970年から毎年続けていて、今年で57回目だって」
サキ:「57回! 半世紀以上ずっとやってるんだ」
エミ:「きょう11月5日は、国宝の大浦天主堂など5つの施設で、漏電や避雷針の働きを点検するそうよ」
サキ:「教会の避雷針って、たしかに大事そう。高い建物だもんね。地味だけど、こういう点検が一番大事なんだよね。漏電といえば、沖縄の首里城正殿の火災が思い浮かぶよ」
エミ:「火災の原因は特定されていないけど、漏電が疑われているわね。次のニュースはその首里城よ」
4 沖縄・首里城正殿の防火設備を報道陣に初公開 スプリンクラー新設、消防へ自動通報
サキ:「全焼した首里城の正殿が新しく再建されて、防災体制も見直したってニュースの続報だね」(11月3日のニュース)
エミ:「そう。その防火設備が、11月4日に初めて報道陣に公開されたの。2019年の火事のときは、正殿の中にスプリンクラーがなくて、消防が門を破って遠くからホースを延ばしたから、消すのに時間がかかって、水も足りなかったんですって」
サキ:「それは悔しいね……。今回はどうなったの?」
エミ:「スプリンクラーに、漏電遮断器、地震を感じたら電気を止めるブレーカー、煙や熱の感知器、夜でもくっきり撮れるカメラを新しく付けたそうよ。火災報知器が鳴ると消防に自動で通報して、門も自動で開くの」
サキ:「門が自動で開くのはいいね。前は門を破らないといけなかったんだもんね」
エミ:「正殿の近くには消火栓や放水口をいくつも作って、地面の下の送水管や、増やした消火水槽とつないでいるの。水の幕で燃え広がるのを防ぐドレンチャーは、配管を4つのエリアに分けて、火元に合わせて水を出せるようにしたんですって」
サキ:「全部に一度に水を出すより、必要なところに集中させられるから、水も足りなくなりにくいと思うよ」
エミ:「視察した専門家も『防災設備は目立たず、内観ととけ合っている』と評価しているわ。11月22日に復元完成式があって、23日の正午から一般公開よ。正殿の中は事前予約制ね」
サキ:「見た目はそのままで、中身はしっかり守られてるんだね。今度こそ、ずっと残ってほしいな」
出典:日本経済新聞/朝日新聞/QAB/中日新聞(共同)/公式:首里城公園 正殿内観覧予約について
5 重文になる大阪城天守閣、「市民の寄付でできた復興天守」の来歴を建築士家が解説
サキ:「最後は大阪城。重要文化財になるって話、前にやったよね」(10月16日の重文答申のニュース)
エミ:「そう。その大阪城天守閣が建てられるまでの経緯を、建築史家の橋爪紳也さんが産経新聞のコラムでたどっているの。いまの天守は昭和6年、1931年にできた3代目(豊臣期、徳川期に次ぐ)っていうところから始めているわね」
サキ:「3代目なんだ。最初に建てようって言い出したのは誰なの?」
エミ:「大正10年ごろに、市の職員が、外観を『豊公当時の大阪城』にして、中を美術品や郷土資料の展示場にする案を考えたそうよ。それから大正14年の大大阪記念博覧会で、仮設の『豊公館』が人気になったのが、天守を復興するきっかけになったんですって」
サキ:「仮設のパビリオンが人気で、本物を建てることになったんだ。去年の大阪・関西万博でも、落合陽一さんプロデュースのパビリオン「null²(ヌルヌル)」が横浜に常設施設として10月14日にオープンしているね」
エミ:「歴史は繰り返すわね。それで、關一市長が昭和天皇の即位記念事業として呼びかけて、古川重春っていう人が『大坂夏の陣図屏風』や、姫路城、名古屋城なんかを調べて外観を設計したそうよ」
サキ:「名古屋城もお手本だったんだ。今日の1本目とつながったね」
エミ:「総額150万円の費用は、住友家みたいな大口から、市民や子どもの小口まで、合わせて7万8000件の寄付で、半年ほどで集まったんですって」
サキ:「子どもまで寄付したんだ! まさにみんなのお城だね。重文になるのは、寄付した当時の子供たちもうれしいだろうね。存命なら100歳を超えているけど」
出典:産経新聞/公式:大阪府 重要文化財(建造物)の指定について
エミ:「というわけで、今日は5本。名古屋城から大阪城まで、お城で始まってお城で終わったわね」
サキ:「首里城もあったから、お城は3つだよ」
エミ:「あら、そうだったわ。じゃあ私も、名古屋城の天守に上れる日のために、7万8000件目の寄付をしようかしら」
サキ:「それ大阪城の数字だから。しかも締め切り、90年以上前だよ」


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