国民必見!宮内庁所蔵の狩野永徳や北斎から国宝の雪舟、尾形光琳まで!東博特別展「美を紡ぐ 日本美術の名品」

「こんなにすごいものを持っていたのね、皇室って」と、ため息が漏れた。

正直、会場に入る前は「平成から令和への切り替えだから惰性で実施した展覧会だろう」と舐めていた。すみません。

私の場合、博物館や美術館の展覧会は、「学ぼう」と決心しておもむく。だが、そんな努力なしに、時代もバラバラ、種類もバラバラに並ぶ、優品の迫力を知識なしに感じられる展覧会だったのだ。

国宝や重要文化財は、「国民共通の宝」なので、指定されると、たとえ所有者でも好きなことはできない。一般国民への公開の義務もある、なにせ国民の宝だから。
そのためだろう、宮内庁(宮内庁三の丸尚蔵館)が持っているお宝は、国宝や重要文化財には指定されていない。
だが、会場で一目見て、「少なくとも重要文化財クラス」がゴロゴロしていて、圧倒された。

展示数は、国宝5件、重要文化財14件を含む41件と、数だけでみると、それほどの規模の展覧会とは思わないだろう。
だが、「美を紡ぐ 日本美術の名品」のタイトルにいつわりはなく、未指定の宮内庁蔵と主に東博蔵の国宝・重要文化財のコラボは、平安時代から近現代まで網羅しており、胸がいっぱいになること請け合いだ。

1室目(本館特別5室)に、入ると、いきなり圧倒的な獅子が飛び込んでくる。
未指定品の宮内庁の狩野永徳と曽孫の狩野常信の「唐獅子図屏風」だ。
大きいこと、大きいこと。

少し離れたところには、国宝の狩野永徳の「檜図屏風」が飾られているが、唐獅子図屏風がそれに遜色ないことは明らかだ。

狩野永徳以上に驚いたのが、葛飾北斎の「西瓜図」(宮内庁)だ。未指定品である。
これは、ぜひとも見て感じてほしいのだが、「狂気」としか言いようがない。実際に作者本人が「画狂老人卍筆 齢八十」とサイン(落款)しているくらいである。本人認定の狂気の作品だ。
たんに西瓜と剥いた西瓜の皮が描かれているだけなのが、これほど意味もなく、迫ってくる絵画は珍しい。
これを見た人も、色々理由をつけたがっているようで、七夕をモチーフにした、などと色々な説があるとのことだ。
私には、古い伊万里焼きに時折感じる「狂気」を感じた、としか言いようがないが、この絵の前では多くの時間と心が割かれた。

1室目でも、だいぶ満足だったが、この展示では、2室目(本館特別4室)、2階にあがって、3室目(2室)と4室目(1室)がある。
41件なのに、4室を使っているということは、普段は出せないであろう巨大な作品が多く展示されているということでもあり、また、かなり説明が丁寧だったと感じた。

ほかにも、俵屋宗達、狩野探幽、尾形光琳、伊藤若冲、円山応挙、黒田清輝、横山大観などなど、そうそうたるメンバー。
面白かったのは、会場で配られていた読売新聞PR号外で巻頭に紹介されていた国宝の久隅守景筆「納涼図屏風」(東博蔵)だ。
「何とも力の抜けた、のんびりした絵ではないか。これが国宝なのだから、日本の文化も懐が深い」(前田恭二・読売新聞文化部長)とあるように、ゆるゆるな雰囲気がすごくいい。

ジャンルでは、仁清の水指など、工芸も充実。そして私のお気に入りのジャンルである書も見応えがあった。

1室目(特別5室)にあった、三蹟の小野道風の「屏風土代」(宮内庁)や藤原定家筆の「更級日記」(宮内庁)が見られたのは、感動した。さすが皇室、持ってる。
また、紙がすれて薄くなっているのかと思いきや、拡大鏡で見て、筆の一本一本の線の細かさにうならされたのが、重要文化財の後伏見天皇筆の「古今和歌集」(東博蔵)。超絶技巧すぎて、筆者(後伏見天皇)は相当に神経質だったのだろうなぁなどと勝手に想像する。

もう一度会期中(6月2日まで)に行くだろう。北斎の西瓜を見るために。

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