2020年に歴史好きがおススメする歴史以外の5冊 

2019年は、ほとんど古代史や戦国ものを読まずに、歴史本では近現代や民俗学っぽいノンフィクション、そして歴史小説をけっこうな冊数、読みました。
2020年にぜひ読んでほしい本を、歴史の本以外で、特に「これは面白い!!!」本ベスト5を紹介します。

1 「パワースポットはここですね」(高橋秀実著)

ゆるゆるノンフィクション作家による、ゆるふわ硬派ルポ。
最初は、日本の世界遺産と、意識高めに取材をはじめた。だが、すぐに「富岡製糸場」で、「これの一体、なにが面白いんですか?」と地元の人に詰問された高橋さんは、苦し紛れに「じゃあ、みなさんはどこにいくのですか?」と聞くと、「群馬といえば、パワースポット」と答えるではないか。
そして、高橋さんは「勘違いかもしれないが、私は日本文化の鉱脈を発見したようになったのである」。
全国のパワースポットをまわる珍道中がはじまる。
富岡製糸場を「人類共通の普遍的な遺産」といわれても、ぴんとこない人は多いでしょう。そこから、一気にパワースポットとはなにかの探求へ移っていくのが、さすが高橋さんである。
単純に旅コラムとして面白い、だけでなく、読んでいて、いろいろと歴史的な「発見」があった。歴史的といっても、パワースポットなので、実際には現代史や民俗学としての発見である。
そもそも「パワースポット」との言葉は誰がつくったのか。
それが明らかにされている。かつて70年代に一世を風靡したスプーン曲げの超能力者、清田益章さんだった。日本最初のパワースポット(清田さんが命名したとすると)は、東京の荒川土手にあったのだ!
くしくも2019年秋の台風で、すさまじい自然力をはねかえしたのが、荒川スーパー堤防である。やはりパワースポットだったと、しみじみと感じたりもした。

2 「三体」(劉慈欣著)

中国で最も人気のSF小説が、とうとう日本語版に!2019年はSFファンにとっての最大のニュースは、「三体」か、スターウォーズ完結か、くらいに話題になった。SFを読むのは久しぶりだったが、単純に面白い。次元をたたんでしまう壮大な世界観となんでもすぱっと切れちゃう超合金(炭素)のようなスーパーチープな世界観が併存しているのも、物語の勢いがすばらしく流れるので、気にならない。中国の暗黒史であろう文革がベースになっていて、内戦状態だった当時の様子が凄惨に描かれてて、近現代史の観点からも楽しめた。

 3 「へうげもの」(山田芳裕作)

戦国武将の古田織部を一躍有名にした漫画。2018年に最終25巻が刊行されていたのですが、2019年になって、ようやく1巻から読破した。織部と家康の対立が、かの国宝「風神雷神図屏風」に昇華していく様は、感動。当時の「茶道」が現代のお上品なものとはかけ離れていたことなど、漫画だからすっと理解できることがたくさんあった。歴史漫画として殿堂入り(殿堂があれば)は間違いない名著である。
最近は、本能寺の変の原因について話(今年の大河ドラマだからだろう)がでると、「秀吉が主犯」説を言う人がけっこう多い。秀吉が黒幕、ではなく、主犯というのは、おそらくこの「へうげもの」が与えた印象が強いのだろう。

4 「マタギ奇談」(工藤隆雄著)

月980円のKindleUnlimitedは、非常に充実している。雑誌のように本が読めるのだから、コスパは高い。この「マタギ奇談」はKindleUnlimitedでベストセラーになっていたので、なんとなく読んだのだが、「当たった」と感じた。
<マタギたちが経験した山での不思議な経験を、長年にわたって取材、書き下ろした実話譚。>
八甲田山の遭難事件で、ひどい目にあった地元のマタギの秘話では、新田次郎の『八甲田山死の彷徨』 (新潮文庫に収録)のネタ本があり、そこでは地元のマタギの話も入っていたが、新田版ではきれいさっぱり触れられなかったことが、「へぇ」ボタン連打だった。

5 「若頭の社会復帰と三つの山口組の行方 中野太郎の激震から七代目の野望まで」(竹垣悟著)

山口組が分裂したことで、ヤクザの組織に興味を持った。というのも、直参、二次団体、三次団体とあるのが、戦国時代から江戸時代にかけての武士の社会制度を理解するのに、ぴったりだからだ。例えば、山口組の名門のA組が復活した、とあるので、A組とはどれほど歴史のある(江戸時代くらいからの博徒)かと思うと、せいぜい20年、30年の歴史の組織であるのがほとんどだったりする。「名門」の意味が、江戸時代初期にも、おそらく同じような意味で、新興勢力にもかかわらず1代目が大きな勲功を得たため、「名門前田家」「名門井伊家」などで使われたと推定した。名門を背負った各家は、それにふさわしい上古の歴史を掘り出していくことになる。
この本で、驚いて、謎が解けたのが、在日韓国・朝鮮人が山口組のトップにならないというルールについて、明快な理由(差別からではない)を書いていたことだ。これは、近現代の歴史の本を読んでいてもわからない、日韓の暗黒史が隠れているようだ。ヒントは殺しの柳川組にあった。

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