やばい本は「発禁」(発売禁止)という処置が戦前の日本にはあった。
戦後の憲法で言論の自由が保障されたため、政府や自治体などの権力者が本の出版を差し止めることはできない。(ただし、エロ本は別である。)
戦前の発禁本については、国立国会図書館が旧帝国図書館の時代に、目録(リスト)『発禁図書函号目録』にしている。
「安寧」と「風俗」の面から、の2つの理由から、発禁になった本のタイトルがずらっと並ぶ。
タイトルを見る限りだが、「安寧」は、日本社会を壊す恐れありということで、共産主義ものなどが多く、正直、現在では「発禁」に値する(刺激的な)ものは少ないようだ。
面白いのは「風俗」だ。社会を乱す恐れありとして、関東大震災を経験した子どもたちの手記「子供の震災記」など、歴史的に価値が高いものも多いのだが、とんでもない本もある。
ヨーロッパで起きた殺人事件の現場写真(遺体も写っている)を集めて、その解説をしている本(昭和5年刊行)だ。タイトル(あえて書かないが)で興味をもって、国会図書館の検索をしたところ、インターネット公開資料になっていて、中身がぜんぶ読める。実際に見て見て、そのグロい写真群に驚いた。(古い本なのでモノクロでかつ鮮明でないことが逆に救われる)
タイでは、新聞のトップに交通事故などの死体写真が載ることで有名だが、現在の日本ではまずありえない出版物だろう。
国会図書館の報告書『参考書誌研究・第77号』に、大塚奈奈絵氏が「国立国会図書館所蔵『発禁図書函号目録』―安寧ノ部・風俗ノ部―」として論文(報告書)を載せているので、興味のある人はそれの一覧から探してみてほしい。
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