【書評】『理系読書』(犬塚壮志)ある意味画期的かつ本質的な読み方

代々木ゼミナールの化学の人気講師という経歴の犬塚壮志『理系読書』を読了。

これは、ある意味で画期的かつ本質的な本の読み方を紹介しています。
それは本の9割は「捨てていい」ということ。

はなから、本の200~300ページをすべて吸収しようというのではなく、そのうち1割、つまり20ページ分でも、理解できたり、新しい知識が手に入れば、読書としては十分にもとがとれている、というものです。

これは、ある意味で真理です。

なにもすべての本の190ページがあらゆる人にとって無駄なわけではありません。その人によって、この10ページ、別の人には別の10ページが、と刺さる部分が異なるのが、読書のいいところでもあります。

この本では、実用書だから1割で十分と言っていますが、実際のところ、この法則はフィクション、小説でも通用します。小説も、すべてが新しい視点や発想、見たことも聞いたことも無い、ストーリーやトリックがあるわけではありません。

とくに古典と呼ばれるものについては、あらかじめストーリーを掴んでから読んだほうが、面白い場合も多々あります。(正直、古典のストーリー展開は、現在では古くさく、新味のないものばかりです。それは当然のことといえば当然です)

1500円の本を買って、150円分のページしか、意味がない、というと、読書が壮大な無駄と感じるかもしれませんが、たとえ1ページでも、1行でも、自分が知らなかったことを知れれば、安いものだと、思えたとき、多読や独学の世界が広がるのかもしれません。

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