瀧山寺 運慶作の仏像に納められた源頼朝の毛と歯【愛知・岡崎】

頼朝の「仏舎利」が運慶仏に?
すごいー!

愛知県岡崎市の瀧山寺(滝山寺、たきさんじ)は岡崎市街地から東の里山に入ったところに位置します。

奈良時代の伝説的な「役小角」が開設したとされていますが、歴史的には平安後期の保安年間(1120-24年)に延暦寺の僧侶が再建(実質的な創建?)したことが確実とされています。この頃、熱田神宮の大宮司祐範が住職(住持)となって事実上、熱田神宮(名古屋市)が所領したようです。矢作川左岸の岡崎市街地までにいたるまでのかなり広い範囲が寺領でした。

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仏舎利化?! 源頼朝のいとこが住職で本物の歯

祐範の姉が、源頼朝のお母さんだった、つまり住職と頼朝がいとこだったために、鎌倉時代にはとても繁栄しました。
重要文化財の聖観音菩薩立像は運慶と息子湛慶(たんけい)の作ですが、これは頼朝の一周忌に合わせてつくられたもので、頼朝の等身大サイズのうえに、内部には頼朝の歯と髪の毛(もしくはヒゲが納められています。実際に、赤外線調査でも確認されています。なにげにすごいですね。

宝物殿で拝観できます。(拝観料300円)

このお寺は2月に行われる、重要文化財の本堂で松明の炎で鬼を追い回す「鬼まつり」でも知られています。戦国時代に途絶え、3代将軍徳川家光が再開を命じたとされている奇祭です。(2018年は2月17日)


(2017年のお祭りの動画)

公式HPが非常に充実していますので、参拝時にはご参考に。

 

運慶による仏像、本堂とふもとにある三門(仁王門、寺まで約1キロ)および、明治の廃仏毀釈で別法人となりましたが隣接する東照宮が重要文化財に指定されています。

瀧山東照宮は、日光東照宮・久能山東照宮と並ぶ3大東照宮。日光と久能山はいずれも国宝です。お寺の参拝時には東照宮のほうにも訪れたいですね。(東照宮は土日にも拝観可能=200円)

運慶だけでなく歴史的建造物群をばっちり味わう観覧ルート案

重要なポイントを網羅できるコースをご案内します。

1)いきなり滝山寺へ向かわずに500メートルほど下の重文の三門をまず見学

1267年に熱田神宮家の藤原光延によって建てられた、入母屋造り、こけら葺きの大屋根の荘厳の門です。両脇に仁王門がいるため「仁王門」と呼ばれています。装飾は江戸時代以降にかなり盛られた部分もあるようですが、本殿と同じ南北朝時代とみられているので、この三門が一番古い建築物の一つです。

2)瀧山寺入り口から

駐車場がありますので、そこから石段をのぼり、本殿を目指します。途中にお寺なのに鳥居があるのは、逆に江戸時代までの神仏が一緒にまつられていたことの歴史の証といえます。

3)南北朝時代の本殿=重要文化財

瀧山寺は、伝承では686年に役行者が天武天皇の命で創建したとされています。が、実際には「再興」された1120-1123年が「創建」とみるのが妥当でしょう。それでも平安時代です。尾張の熱田神宮が事実上、所領していたようです。

鎌倉時代は、熱田神宮の娘を母とする源頼朝のいとこが住職だったために興隆しました。現在の本殿のあるところ(西峯)に本殿が建てられたのは、鎌倉時代の貞応元年(1222年)ですが、現存する5間✕5間の重文の本殿は、その様式から南北朝時代のころの建物とみられています。

三河は足利氏が守護をつとめていた「ふるさと」なので、南北朝時代には足利幕府が庇護をして、ひきつづき勢力を維持していました。

しかし、室町時代が進み、戦国時代に近づくと、一色氏が三河の守護になり、「足利?源氏?なにそれ?オレがここの王さま」みたいになり、お寺は衰退していきました。

江戸時代になると、徳川家が庇護して、上野の寛永寺の「支店」となったために、再び興隆します。
家康は途中から源氏の末裔を名乗っていましたから、源頼朝と本当に親族関係のあった瀧山寺は、源氏将軍徳川家のアイデンティティーのためにも大切にする必要があったのでしょう。

4)江戸時代に再建された日吉山王社

瀧山寺の守護神です。お寺の守護神というのも変な感じがしますが、江戸時代以前は標準装備です。
家康が1608年に建てたとされる七間社流造の神社です。南北朝まで存在した7間の山王社の記録をもとに7間のサイズにしたのでしょう。現在はトタン屋根のため、貴重な建物にみえませんが、江戸前期の神社建築として貴重です。床下に正保2年(1645年)の墨書きがあることから、家康ではなく、おそらく次の瀧山東照宮が創建されたときに建てられたのでしょう。少なくとも正保2年に大規模リフォームされているのは確実とみられています。

また江戸時代後期に、もともとこけら葺きだった屋根を瓦に変えたところ屋根の重みで建物が傷んでおり、昭和50年代に現在のトタン屋根に変えたのだそうです。見た目はアレですが、文化財を守るための工夫なのです。

天夏
七間社流造というのは、7間の横長の建物で、山王7神をまつるために7つの空間があるんだって。

5)土日のみ拝観可能 瀧山東照宮(重文) 家光が創建

明治の廃仏毀釈で寺院と神社が分離されていますが、もともとは一緒です。1645年に3代将軍徳川家光がおじいちゃんの生まれた三河・岡崎にも造った東照宮です。(完成は翌46年)日光東照宮、久能山東照宮とともに日本三東照宮と称されています。
本殿、中門、拝殿、鳥居などが重要文化財に指定されています。

全景(文化財ナビ愛知より)

注意)東照宮は土日のみ拝観できます

6)運慶作の仏像を間近に拝観できる宝物殿は必見

瀧山寺で外せないのが、運慶・湛慶親子作の聖観音像です。宝物殿で見ることができます。(拝観料300円)
時々、全国の博物館などへ貸出されているときもあるらしいので、事前に瀧山寺に電話して確認したほうがいいかもしれませんね。(電話番号0564-46-2296)

まとめ
1 鎌倉時代の名工・運慶による仏像を見ることができる
2 南北朝時代の本堂と楼門がある
3 江戸時代前期の神社建築がある(土日のみ拝観)

 

アクセス

車がオススメですが、バスでしたら重要文化財の三門(仁王門)近くの「滝団地口」までの本数は多くあります。そこから1キロ散策を兼ねて歩けば、バスでも可能です。お寺の最寄りのバス停「滝山寺下」は本数が少ないので要注意です。

参考:『愛知県史別編文化財1』、文化財ナビ愛知

アイキャッチの画像は岡崎市観光協会HP「岡崎おでかけナビ」を利用いたしました。

 

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