兵庫県の室町時代の民家2軒が日本初の”民家国宝”に 文化財指定ニュース

(平日の夜、大手町近くのカフェ。エミがスマホをじっと見つめている)

エミ:「サキちゃん、エリザベス宮殿に住みたい?」

サキ:「(あっ、これは『住みたい』って答えを求めるやつだ)……う、うん。住みたいなぁ、エリザベス宮殿(棒)」

エミ:「(ぱーっと顔が輝く)そうでしょ、やっぱりそう思うよね! でもねぇ、国宝の建物でも住みやすいかしら」

サキ:「(やっぱり来た!)そうだね。国宝なら住みやすいんじゃないの?」

エミ:「ふふ、それがね……今日はその話がしたかったの。サキちゃん、いま日本の国宝の建物って、お寺とかお城とか神社ばっかりだと思わない?」

サキ:「言われてみれば……金閣寺とか姫路城とか。あれって誰かが住んでるわけじゃないもんね。ていうかエミちゃん、エリザベス宮殿ってバッキンガム宮殿のこと?」

エミ:「(聞いていない)――でね、ついに『人が住むための家』つまり民家が、日本で初めて国宝になるのよ!」

サキ:「ええっ!? 家が国宝!?」


そもそも「民家が国宝」って、初めてなの?

エミ:「2026年5月22日、国の文化審議会が文部科学大臣に答申を出してね。兵庫県の古い民家2軒を国宝にしましょう、って。これが――民家としては全国で初めての国宝指定なの」

サキ:「初めて!? いままで一軒も無かったってこと?」

エミ:「そうなの。発表資料を見るとね、国宝の『民家』はこれまで0件0棟。そこに今回いきなり2件2棟が新規で加わるの。ゼロからのスタートよ」

サキ:「うわぁ、歴史が動いた瞬間じゃん……。ちなみに何の家なの?」

エミ:「神戸市の箱木家はこぎけ住宅と、姫路市の旧古井家きゅうふるいけ住宅。どっちも兵庫県。しかもね、兵庫県の建造物が国宝になるのは、1955年の太山寺(神戸市)本堂以来――71年ぶりなんだって」

サキ:「71年ぶり! なんかもう、それだけで地元の人ガッツポーズじゃない?」

主役①:箱木家住宅 ― 700年前の“最古ハウス”

箱木家住宅(文化庁のプレスリリースから)


(サキがアイスロイヤルミルクティーをストローで吸いながら)

サキ:「で、最初の一軒は神戸の……はこぎさんち?」

エミ:「箱木家住宅。地元では昔から『箱木千年家はこぎせんねんや』って呼ばれてるそうなの。建てられたのは、なんと14世紀ごろ。現存する日本最古の民家よ」

サキ:「14世紀って……えっと、室町時代? 600年とか700年前ってこと!? それがまだ建ってるの!?」

エミ:「(早口で)建ってるの! しかもね、ただ古いだけじゃないのよ。柱と柱の間隔がね、全部バラバラなの。お寺とかの国宝クラスの建物なら普通は『一間いっけん』って決まった寸法で揃えるんだけど、箱木家は全部の柱間寸法が違う。こんな配置、ほかに例がないの。震える……」

サキ:「(エミちゃん早口になってる、好きなやつだ)えっ、寸法バラバラって、設計ミスじゃないの?」

エミ:「ふふ、理系のサキちゃんらしい疑問ね。でも逆なの。寸法を揃えるルールがまだ確立する“前”の時代の民家、っていう証拠なのよ。部材も手斧(ちょうな)で削ったうろこ状の跡が残ってて、荒削りのまんま。文化財の専門家も『荒削りで終わっている点がダイナミック』って評価してるくらい」

サキ:「あー、なるほど! 整ってないことが“古さの証明書”になってるってことか。むしろレアなんだ」

エミのメモ📝

箱木家は、中世にこの地域(山田しょう)を取りしきった土豪どごう=在地の有力者。お祭りを運営する組織「宮座みやざ」のなかで、世話役の上から二番目「下頭屋しもとうや」を務めていたの。つまり「えらい人のお屋敷」というより「地元のまとめ役の家」。そんな“暮らしの家”がそのまま残っているのが奇跡的ですよ。

サキ:「ねぇ、700年も同じ場所に建ってるってこと?」

エミ:「そこはちょっと事情があってね。1970〜80年代、近くに呑吐どんどダムができることになって、約70メートル南東に移築されたの。約7メートルかさ上げもされて、いまは衝原湖つくはらこのほとりに建ってる。それでも今も箱木家のものなのよ」

サキ:「家ごとお引っ越し……! 700歳の家を動かすって、想像するだけでヒヤヒヤするんだけど」

主役②:旧古井家住宅 ―通り名「無災の千年家」!動かなかった奇跡

旧古井家住宅(文化庁のプレスリリースから)


エミ:「もう一軒は姫路市安富町の旧古井家住宅。こっちは15世紀の建築で、『現存最古“級”』。中世に有力な農民(名主みょうしゅ)だった古井家のお家なの」

サキ:「箱木家がお引っ越し組なら、こっちは……?」

エミ:「(目を潤ませながら)こっちはね、建てられてから今までずーっと同じ場所・同じ環境で守られてきたの。場所が変わってないって、文化財としてはすごく特別なことなのよ。だから別名『無災むさい千年家せんねんや』。近くで火事が2回起きたのに、どっちも焼けずに残ったんだって」

サキ:「無災の千年家……かっこよすぎ。火事を2回もよけたって、もう家に意思があるんじゃないの?」

エミ:「ふふ、ロマンよね。上屋じょうやの主要な柱や梁は建てた当初のものがそのまま残ってると言われてるの。いまは地元住民の管理組合が守っていて、所有は姫路市。みんなで受け継いできた家なのよ」

サキ:「箱木家は“家を動かして”守って、古井家は“動かさず”に守った。守り方が真逆なのに、どっちも700年生き延びたの、なんか沁みるなぁ……」

エミ:「(うんうん頷いて)いい視点。守り方は違っても、『この家を残したい』っていう人の気持ちは同じ、っていうね」

エミのメモ📝

2軒に共通する特徴が 大壁造おおかべづくり(柱を壁で塗りこめて外に見せない)と 前座敷型三間取まえざしきがたみまどり(正面に1部屋、背面に2部屋を並べる間取り)。窓が少なくて閉鎖的な見た目だけど、これが近畿の民家の“ご先祖さまの形”と考えられています。今のおうちの間取りのルーツ、ってわけですね。

そして「国宝、住み心地どうなの問題」を回収する

サキ:「……あれ。ってことはエミちゃん、さっきの『国宝でも住みやすいかしら』って質問さ」

エミ:「気づいた?」

サキ:「今回の国宝、もともと“住むための家”じゃん! お寺やお城と違って、人が実際に暮らしてた建物が国宝になったんだ。だから初めて『国宝の住み心地』を真面目に語れるようになったってこと!?」

エミ:「(拍手)大正解! そこに気づいてほしかったの。ただね……正直に言うと、住みやすいかと言われると――軒は低いし、窓は小さくて中は薄暗いし、柱の間隔はバラバラ。現代人がいきなり住むのはなかなかハードよ」

サキ:「えええ、エリザベス宮殿どころじゃなかった(笑)。でもさ、700年“持った”家って時点で、住宅としては最強の実績じゃない? マンション借りるとき平成築ってだけでで『ちょっと古いかなぁ』って思ったくらいなのに」

エミ:「ふふ、確かに。耐久性のレビュー☆5つどころじゃないわね。長持ちという意味では、人類の頂点に立つお家かも」

サキ:「人類の頂点は……大げさだけど……でも国の宝ではあることは間違いないね」

エミ:「でしょう。住みたくなった?」

サキ:「いや、それはない……」

おまけ:今回は重要文化財もアツい

エミ:「主役は民家2軒だけど、同じ答申で重要文化財に上がった建物も粒ぞろいなの。彫刻びっしりの川越・氷川神社ひかわじんじゃ本殿、佐渡の姫埼ひめさき灯台に能登の禄剛埼ろっこうさき灯台っていう現役の鉄&石の灯台コンビ、それから建築家・吉村順三が軽井沢に建てた自分の別荘までね」

サキ:「灯台と神社と別荘って、ジャンルばらばらで楽しい! 吉村順三の別荘って、なんか聞いたことある気がする」

エミ:「森のなかに片流れ屋根でちょこんと建ってる、すっごく可愛い名作建築物ね。これはまた別の機会にゆっくり語りたいわね」


🎵 プレイリスト会議

サキ:「じゃあ恒例の、今日のプレイリストを決めよっか! お題は……『700年、同じ場所に建ち続けた家』!」

エミ:「いいわね。じゃあ私はヨルシカの『藍二乗』かな。冒頭の歌詞に出てくる“変わらない風景”みたいな空気が、ずーっとほぼ同じ場所に在り続けた二つの家とぴったりなの。時間が流れても、そこにあり続けるものの尊さ、っていう」

サキ:「あー、わかるわぁ。あの曲、時間がゆっくり流れる感じするもんね」

エミ:「サキちゃんは?」

サキ:「私はMrs. GREEN APPLEの『ニュー・マイ・ノーマル』! 今回ってさ、お寺でもお城でもなくて“ふつうの暮らしの場所”が国宝になったわけじゃん。特別じゃない日常がいちばん尊い、みたいなテーマがハマるなって。歌詞の『ポピュラーミュージック』は『民家』っぽいなって」

エミ:「(目を潤ませて)……サキちゃん、さすがだわ。民家が国宝になった意味そのものよ、それ」

サキ:「えへへ。あと最後に2人で1曲、対比で入れたいな。ヨルシカ『春泥棒』。桜って一瞬で散る“有限の美しさ”じゃん? それと比べると、700年も散らずに残った家って、もうとんでもないなって思えてくるの」

エミ:「すぐに散る桜の儚さを知ってるからこそ、残り続けたものに震えるのよね。よし、決まり!」

  1. ヨルシカ「藍二乗」― 時が流れても在り続ける“変わらない場所”を、最古級の古井家に重ねて
  2. Mrs. GREEN APPLE「ニュー・マイ・ノーマル」― お寺でも城でもない“ふつうの暮らし”が国宝になった意味に
  3. ヨルシカ「春泥棒」― 一瞬で散る桜との対比で、700年残った家の凄みを噛みしめる

サキ:「結論:国宝、住み心地は微妙。でも耐久性は人類最強」

エミ:「身も蓋もない(笑)。でも、誰かがずっと大事にしてきた“ただの家”が、いちばん高い宝物になった――それって素敵な話だと思わない?」

サキ:「うん。今度兵庫に行って『無敵の千年家」を見に行こうよ。一緒にモダンな神戸の街も一緒に歩きたいな」

エミ:「決まり、現地レポートはまた今度!ちなみに『無災の千年家』ね!」

発表:文化審議会の答申(2026年5月22日)
国宝(新規):箱木家住宅 主屋(兵庫県神戸市)・旧古井家住宅(兵庫県姫路市)― いずれも民家として全国初の国宝
※答申どおり指定されれば、建造物の国宝は235件・305棟に。実際の見学可否・公開状況は各所有者/自治体の最新情報をご確認ください。

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