児島虎次郎の”名画買いすぎ伝説”の旅──「大原美術館所蔵展」at 大阪・中之島香雪美術館

大阪・中之島。平日の夕方。川沿いの風は冷たかったのに、「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」ビル4階の中之島香雪美術館の入口付近だけ、なんだか人の熱で空気がアツい。

サキ:「ねえエミちゃん、ついに来たよ! 『大原美術館所蔵 名画への旅 虎次郎の夢』!」

エミ:「サイトやチラシを見ても画像で見たことのある西洋画の名品がたくさんあるみたいね」

サキ:「実際、倉敷まで行かないと見られない大原美術館の主役級が大阪に来てるんだもの。これは事件だよ!」

エミ:「サキちゃんが珍しく熱い口調!夕方なら空いてるかなって思ったんだけど……思ったより人いるね?」

サキ:「この展覧会……Xで『圧巻』『一生に一度レベルの豪華さ』『奇跡』って言われてたの、ちょっと盛ってるのかなって思ってたけど……入る前から分かる。これは当たり」

エミ:「西洋画好きのサキちゃんの予感!楽しみ」

「西洋画だと熱いね、サキちゃん」「そ、そうかな」

児島虎次郎──名画を”選んだ人”の旅

サキ:「虎次郎ってさ、大原美術館のコレクションを作った人なんだよね。キャプション読むの楽しい……旅行記みたい」

エミ:「虎次郎の狂気ともいえる収集の旅よね。いちばん笑ったのがね──買い付けの旅3回目のとき、”大々的大蒐集決行”って銘打って旅立ったのはいいんだけど、本当に買いまくって、パトロンの大原さんから”買物打チ切レ”って電報が来たの」

サキ:「本当にやりすぎ!でもそのおかげで今ここにこれだけの名品が並んでるわけだから、虎次郎の暴走に感謝したいな」

エル・グレコ《受胎告知》──空気が変わる一枚

(展示室を進むと、ひときわ存在感のある絵画が現れる)

エル・グレコ(ドメニコス・テオトコプーロス)《受胎告知》1590頃-1603年 大原美術館所蔵

サキ:「来た……! エル・グレコ《受胎告知》」

エミ:「うん……これはね、見た瞬間に思った。神聖とはこういうことだなって」

サキ:「空気が変わるよね。それだけじゃなく、視線誘導の構図に驚いた。天使が降りてくる動線と、マリアの位置、光の集まり方……『見ろ』って言われてるんじゃなくて、『見てしまう』ように組まれてる感じ」

エル・グレコ(ドメニコス・テオトコプーロス)《受胎告知》1590頃-1603年 大原美術館所蔵

エミ:「さすがサキちゃんの見方面白いわ。Xでもみんな“ここで止まる”ってポストあったけど」

サキ:「止まる。私たちも止まった(笑)」

ムンク、モネ、モディリアーニ、ゴーギャン 名画続々

エドヴァルト・ムンク《マドンナ》1895-1902年 大原美術館蔵

(ムンク《マドンナ》の前で足が止まる)

エミ:「……あ、これリトグラフ(石版)なのに迫力が半端ないわね」

サキ:「そうなんだよね……。後半だし、次のコーナーでモネの《睡蓮》がチラ見えしたから、通り過ぎようかなって思った。そしたら、なんか変なものに呼ばれてる感じがして立ち止まったら──これだった」

エミ:「印刷物なのにこの怖いくらいの引力って、さすがムンクね。これはカウンターパンチ」

クロード・モネ《睡蓮》1906年頃 大原美術館所蔵

(モネ《睡蓮》の前で)

サキ:「モネの睡蓮はさ、いろんな美術館で色々な睡蓮を見てきたけど──やっぱり睡蓮っていいね。なんていうか、”好き”を更新し続けてくれるっていうか」

エミ:「少し離れて見ると光あふれる盛った写真みたいに見えるくらいだけど、近くで見ると筆のタッチがはっきりしていて、ザ・印象派って思った」

サキ:「元祖『筆触分割』だね。写真じゃわからない、色々な角度や距離で見て楽しめる」

アメデオ・モディリアーニ 《ジャンヌ・エビュテルヌの肖像》 1919年 大原美術館所蔵

ポール・ゴーギャン《かぐわしき大地》1892年 大原美術館所蔵

2周目で気づく虎次郎《和服を着たベルギーの少女》の魅力

(二人は2周目へ)

サキ:「2周目は虎次郎自身の作品を集中的に見たいね」

エミ:「いいわね、作家としての虎次郎もちゃんと見よう」

児島虎次郎《和服を着たベルギーの少女》1911年 大原美術館所蔵

サキ:「この《和服を着たベルギーの少女》すっごく好み。ポストカードあるかな、あとで絶対買おう」

エミ:「うわっ、可憐で芯がある少女、可愛い……サキちゃんに似てる……」

サキ:「えっ。なんか言った?」

エミ:「いやいや、な、なんでもないの……」

サキ:「あっ、そう。西洋名画でお腹いっぱいのところに、虎次郎本人の絵でこんなに心撃ち抜かれるとは思わなかった」

そんなに広くないから2周余裕

サキ:「1時間半くらいいたけど、会場がそこまで広くないから2周目もそんなに大変じゃなくて、ちょうどよかったね」

エミ:「1周目で全体を見て、2周目でお気に入りに戻る。虎次郎の3度の旅に2回も乗れるって考えたら、贅沢な時間よ」

サキ:「あ、あとこれ大事──全部写真撮影OKだったね。推しの作品をスマホでお持ち帰りできるのがうれしかった」

エミ:「お腹空いたから夕飯食べながらプレイリスト作ろう」

展覧会情報
大原美術館所蔵 名画への旅 虎次郎の夢
会場:中之島香雪美術館(大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルタワー・ウエスト4F)
会期:2026年1月3日〜3月29日

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