インパール作戦の師団長解任とコロナ下の少年ジャンプの異動の共通点

第二次大戦の中で、Wikipediaで「史上最悪の作戦」と書かれているのが、インパール作戦だ。
高木俊郎による一連のインパールのノンフィクションのうち、1968年の「全滅」と、69年の「憤死」が、2020年に2冊まとめて文春文庫から「インパール3 全滅 憤死」として刊行された。

司令官牟田口中将が、前線で部下たちが飢餓に陥っている最中も、400キロも離れた避暑地で芸者遊びを夜ごと繰り返しながら、ただ突撃を命じつづけたことなど、日本軍上層部の無責任と無能ぶり。それと対照的な現場の兵たちの責任感の強さに、読んでいて怒りと悲しみがぐるぐると渦巻く。

牟田口の最大の愚行の一つは、前線で死闘を続ける3つの師団の師団長を全員途中で更迭したことだ。戦闘中に、である。作戦開始前の「食糧は現地調達」以上に、なにを考えているんだかと絶句する行為だ。

ただ、今の日本でも、現場を知らず無能だがプライドの高い上層部による思いつきに苦しんでいる人は多い。ぜひ多くの日本人がこの本を読んで、自分が上層部なら牟田口化していないかを確認してほしいし、現場の人なら自分や周りを守るためにも、上層部の指示が道理にかなっているかを考えることの大切さをかみしめてほしい。

さて、タイトルの話だが、たまたまマンガアプリ「ジャンプ+」で読んでいたのが、サクライタケシのマンガ「すすめ!ジャンプへっぽこ探検隊!」の【41話】少年ジャンプの正しい作り方 ~リモート編~だ。

おそらく超エリート集団によって運営されているだろうジャンプがインパール化しているのではと、震撼した。

なんと、ジャンプ編集部では、このコロナ下にあって、一番の稼ぎ頭であろう「ONE PIECE」の担当編集者を変更していたのだ!(もっとも担当者は複数人で、その一人かもしれないが)

それだけでない。

ジャンプの印刷を担当する共同印刷という会社があり、ここは言ってみれば兵站にあたる、その担当者も4月に変わっていて、しかもジャンプ1冊分のデータを、この1人で担当しているというのだから驚く。

リモート勤務なので、すべてメールでのやり取りをしているが、ジャンプの編集部から来るメールは、タイトルも統一されておらず、バラバラなのだという。

このマンガはギャグ調である上に、ジャンプ公式なので「検閲済み」であろうが、それでも、「前線」が崩壊寸前ではと思わせる内容だった。

マンガで最前線で戦っているのはマンガ家たちだ。インパール作戦なら、大隊長や中隊長にあたる。
それをサポートする編集者は、師団つきの参謀や通信将校だ。
そして印刷会社は、兵站担当になろうか。

ジャンプが数年後に、どうなっているかはわからない。
しかし、もしも2020年に比べて著しくブランド力を落としてしまったとしたら、原因の一つは2020年春に、求めることができる、と未来の歴史家は言うかもしれない。

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