【奈良→上野】「正倉院 THE SHOW」感想レポ!聖武天皇と光明皇后とともに花氈を踏み、蘭奢待の香りを信長と一緒に聞いた(気がした)話

管理人のエミです。 いつものアート巡り仲間、サキちゃんと一緒に、今回は上野の森美術館で開催中の「正倉院 THE SHOW ―感じる。いま、ここにある奇跡―」(2025年11月9日まで!)に行ってきました!

実は私たち、ついこの間、奈良国立博物館の「正倉院展」で本物(の宝物)を見てきたばかり。 奈良であの天平文化の神髄、1300年の時を超えた「本物」のオーラに打ちのめされたばかりなんです。


その興奮冷めやらぬまま、今度は「THE SHOW」と銘打った東京展に殴り込みです(笑)! 隣の科博「大絶滅展」もすごかったけど、こちらも負けず劣らずの大盛況!

奈良で見た「本物」と、東京で「感じる」体験。 この二つをハシゴしたからこそ見えた、それぞれの魅力と感動を、今回も特大ボリュームで語り尽くします!

上野で「感じる」正倉院という体験

エミ: 私たち、奈良で本物を見たばっかりだけど、この「THE SHOW」も絶対来たかったんだよね。

サキ: 正直、奈良で「本物」を見た直後に「レプリカ展」ってどうなんだろうって、来る前は少し思ってたんだ。あの緊張感やオーラは、やっぱり本物じゃないと…って。

エミ: わかる。その気持ち、すごくわかる。奈良の正倉院展は、まさに「拝見する」という言葉がふさわしい、静謐で厳かな空間だったもんね。息をのむような。

サキ: そうそう。でも、こっちは「THE SHOW」だもんね。Xでも「万博のパビリオンみたい」って言われてたし、エンタメ性が高そうで楽しみ!

エミ: そこなのよ!今日の「THE SHOW」は、奈良で見た「本物」の展示とは全くコンセプトが違うのがポイント。これは「レプリカ展」じゃなくて、「イマーシブな体感型展覧会」なんだよね。

サキ: イマーシブ体感型展覧会?

エミ: うん。イマーシブは没入体験ってことなんだけど、宮内庁正倉院事務所の全面監修のもとで作られた「再現模造」品と、超高精細映像、音楽、そして「香り」で、1300年前の天平文化を五感で体験しようっていう試みなんだって。大阪展では10万人以上も来場したっていうのも頷けるよね。

サキ: なるほど!本物が持つ「時間の重み」じゃなくて、本物が作られた当時の「空間の華やかさ」を感じる展示ってことか。

エミ: まさに!あ、音声ガイド無料だ。神谷浩史さんだ!これは嬉しい!

サキ: あ、でもXの感想だと「混んでて電波悪くて途切れる」って声もあったから、聴けたらラッキーくらいだね(笑)。あっ、写真撮影基本的にOKなんだ。奈良の正倉院展はすべて撮影不可だったからうれしいね。

エミ: とにかく入ろう!奈良の記憶が新しいうちに、この「SHOW」がどう見えるのか、すっごく楽しみ!

花氈を踏み、国家珍宝帳に圧倒される

サキ: うわっ!エミちゃん、足元見て!これって…!

エミ: えっ、うそ!本当だ!これ、奈良で見た「花氈かせん」じゃない!?

サキ: 奈良では厳重にガラスケースの中に展示されてた、あのカラフルな絨毯のレプリカが、床に敷かれてる!

エミ: え、これ、踏んでいいの!?奈良博では、ガラスケースに顔をくっつけるようにして「この文様どうなってるの…」ってガン見したのに!

サキ: いいみたいだよ!うわー、まさかあの花氈の上を歩けるなんて、超VIP待遇じゃない?1300年前の皇族や公家しか歩けなかったかもしれないのに!

エミ: ちょっと躊躇しちゃうね(笑)。よいしょ…あ、思ったよりフカフカ!奈良で見た本物は、さすがに1300年を経て少し色が褪せている部分もあったけど、これは「新品」の色だね。鮮やか!

サキ: まさに「THE SHOW」だからこその体験だね。


エミ: そしてサキちゃん、目の前の壁!「国家珍宝帳こっかちんぽうちょう」!

サキ: うわ、全面展開されてる!巻物なのに、全部広げて展示してある!

エミ: あれ、私も5巻全てを広げているなんて初めて聞いたわ!さすがに本物ではないものの、こうしてずらっと開いて並べられると、もう圧巻としか言いようがないよ。

サキ: そもそも「国家珍宝帳」って、どういうものだっけ?

エミ: これは、聖武天皇が亡くなった四十九日に、光明皇后がその遺愛品約650点を東大寺の大仏様に献納した時の「目録」。いわば、奈良の皇室の宝物のインベントリ・リスト。これが正倉院宝物の核になってるの。

サキ: あの隙間なく朱色で押されてるハンコみたいなのは?

エミ: それが「天皇御璽(てんのうぎょじ)」。天皇の印だね。宝物一つ一つに「確かにこれを献納します」っていう証として、あんなにビッシリと押されてるの。

サキ: なんか、現代の公文書とは全然違う迫力があるね…。几帳面というか、執念というか…。

エミ: 光明皇后の「夫の愛した品々を、どうか大仏様のもとで永遠に守ってください」という強い祈りが、あの朱印の数に表れてる気がする。入口からいきなり奈良の記憶がガツンと蘇ってきて、もう興奮がヤバい!

エミ

国家珍宝帳は、東大寺の盧舎那仏に品々を献納した際の目録で、5巻が現存しています。第1巻の国家珍宝帳は、天平勝宝8年(756年)に光明皇太后が聖武太上天皇の四十九日(七七忌)に際して献じたもので、600点以上の品名や由来が記されています。種々薬帳は同日に薬物60種を、屏風花氈等帳は書屏風や花氈を献納した目録です。その他に大小王真蹟帳や藤原公真蹟屏風帳があり、いずれも品物の品質や法量が詳細に記されています。宝物の来歴や技法を知る重要な資料です。また献納後の管理記録も残っており、宝物が実際に使用されたこともわかります。

クライマックス!幻の香り「蘭奢待」に何を感じる?

この蘭奢待は再現模造ではなくNHKの大河ドラマで作られたレプリカ。大河ドラマだから明治時代に明治天皇が切り取った先端の切り口がありません

エミ: 入口の花氈と国家珍宝帳もすごかったけど、サキちゃん、やっぱり今回の目玉はアレだよね!

サキ: あー!出た!「蘭奢待(らんじゃたい)」!

エミ: そう!正式名称は「黄熟香(おうじゅくこう)」。「蘭奢待」っていう雅な当て字がされてるんだけど、この字の中に「東・大・寺」が隠されてるっていう遊び心もたまらない!

サキ: 織田信長が「ワシにもくれ!」って、権力にモノを言わせて一部を切り取ったっていう、あの幻の香木!

エミ: 信長だけじゃないよ。室町幕府の足利義政も、そして明治天皇も切り取ってる。まさに「天下第一の名香」であり、「権力の象徴」だったの。

サキ: 本物が展示されている奈良博ではガラス越しにもその圧倒的な「存在感」…あのいくつも切り取られた痕に歴史の重みを感じたわ…。

エミ: ここではなんと、その香りを科学的に「再現」して体験できるの!このために来たと言っても過言じゃない!

サキ: わっ、これが…。くんくん。……あ、すごくいい香り!お寺とかで嗅ぐお香のイメージが濃厚かな。白檀(サンダルウッド)みたいな、すごく落ち着く、雅やかな香り。

エミ: ほんと?私も試してみよう。くんくん……なんだろ…南国のフルーツみたいな感じ!

サキ: え、フルーツ!?

エミ: うん!アプリコットをベースに、マンゴーとパパイヤが全乗っかりした杏仁パフェみたいな!甘くて、ちょっとスパイシーで、華やかな香り!

サキ: パフェ!?(笑)同じ香りを嗅いでるのに、全然違うのが面白い!

エミ: Xの感想でも「シナモンっぽい甘いスパイシーさ」とか「老舗洋菓子店の焼き菓子みたい」って言ってる人もいたし、来訪した佳子さまは「バニラのよう」っておっしゃったらしいから、本当に人によって感じ方が違うんだね。

サキ: なんでだろうね?私はやっぱり「東大寺」とか「仏教」っていう文脈を先に連想しちゃうから、お香っぽく感じたのかな。

エミ: 私は逆に、シルクロードを通ってはるばる日本にやってきたっていう「ロマン」を先に感じちゃったから、エキゾチックなフルーツの香りに感じたのかも…。

サキ: これだけ感想が割れるのが、天下第一の名香の奥深さってことか…。信長や義政、明治天皇は、これをどう感じたんだろうね…。

エミ: ね!奈良で本物を見た時も、その木片に歴史の重みを感じたけど、こうして香りを体験すると、彼らが「これを手に入れたい」って熱望した興奮が、ちょっとわかった気がする!

サキ: わかる。グッズの「香りカード」が完売しちゃうのも納得だよ。この香り、持って帰りたいもん。

エミ:そうだね!心のこりがあるとしたら「香りカード」買えなかったことかな。

レプリカじゃない「再現模造」の神髄

エミ: そして見てよこれ!今回の展示のもう一つの主役「再現模造」たち!これは正倉院宝物を代表する「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」。

サキ: うわー!キラッキラ!奈良博でも螺鈿の鏡を見た時も「1300年前のものがこんなに綺麗に残ってるんだ」って感動したけど、これは…輝きが新鮮な感じがする!

エミ: そうなの!奈良で見た本物は、時を経た螺鈿(貝殻)のかすかな輝きと深い色合いに「時間の重み」を感じたけど、こっちは「作られた瞬間」のまばゆい輝きだよね。

サキ: うわっ!正倉院展にあった大仏開眼会のときに使った大きい筆もある。これも再現模造されているだんね。完成度がすごい!

エミ: これこそが「再現模造」のすごさなの。ただのレプリカ(複製品)じゃないのよ。

サキ: どう違うの?

エミ: 「再現模造」は、宮内庁の事業として、当時と同じ素材と、中にはすでに失われた「技法」を再現して、現代の人間国宝級の職人や芸術家さんたちが研究・集結して復元したものなんだって。

サキ: え、じゃあ「1300年前の新品」を、当時の技術で現代に蘇らせた、みたいなこと!?

エミ: まさに!例えば、あの五絃琵琶。これはインドやペルシャから伝来したもので、世界に唯一現存する五絃琵琶なの。裏面のラクダに乗った奏者のデザインとか、超エキゾチックでしょ?

サキ: うんうん。

エミ: この再現模造を作るために、当時の接着剤(ニカワ)の作り方から研究し直したり、貝殻や琥珀の加工技術を再現したりしてるんだって。Xでもその製作過程の映像が流れていて見ごたえがあったね。

サキ: まさに現代の「プロジェクトX」だね…。資料もろくにないのに、どうやって…。「瑠璃坏」のカットグラスの技術だって、当時のササン朝ペルシャの超最先端技術だったんでしょ?

エミ: そう。それを再現する日本の職人さんたちの技術もヤバい。これは単なる展示じゃなくて、「技術の継承」っていう、もう一つの壮大な物語でもあるんだよ。

サキ: あと入り口に入ってすぐの巨大スクリーンでの映像もすごかった…。『万博の高揚感を味わってしまった』って感想も見たけどわかる。本当に映画みたいだった。

エミ: 雅楽師の東儀秀樹さんもXで絶賛してたしね。音楽は「新美の巨人」の亀田誠治さん、あと篠原ともえさんとかアーティストも新しいデザインの作品を作っていて、伝統と現代の融合っていうテーマが明確で、本当に「SHOW」だった!

「本物」と「体験」、両方見てわかったこと

エミ: はぁ…すごかった。想像以上に満足度が高かった。

サキ: 本当だね。奈良で本物を見た後だからこそ、この「THE SHOW」の良さが際立ったかも。

エミ: まさにそれ!私、思ったんだけど、奈良で見た本物は「点と線」の鑑賞だったんだよね。

サキ: 点と線?

エミ: うん。ガラスケースの中にある、一つ一つの宝物が持つ「時間」の重み、1300年生き抜いてきたオーラを、一点集中で感じる。「すごい…」って言葉しか出てこない、あの緊張感。現代にかろうじてつながっている細くて、確かな線。

サキ: わかる。息をのむ緊張感にあふれていた。

エミ: でも、この「THE SHOW」は「面」の鑑賞。宝物が実際に使われていた「空間」や「文化」全体を体感させてくれる。

サキ: ああ、なるほど!

エミ: 「花氈の上を歩き」「蘭奢待の香りを嗅ぎ」「琵琶の音色を聴く」ことで、「作られた当時はこんなに鮮やかだったんだ」「平城京はこんな香りで満たされてたんだ」っていうのを、五感で楽しく追体験させてくれるんだ。

サキ: SHOWを見たから本物の解像度が上がった感じだね!奈良で見ただけじゃわからなかった「色」や「音」や「香り」が、ここで全部繋がったみたい!奈良と上野、両方体験できたのって最高に贅沢だったかもね!

エミ: 本当にそう。本物とは全く違うアプローチで、これだけ感動させられるってすごいことだよね。奈良の「本物」と、上野の「THE SHOW」。両方見られて、私たちの正倉院体験は完璧になったね!

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