私たちが大絶滅展に行ったのは、2025年11月。開幕直後のことでした。あの頃はまだ「混んでるねー」という程度だったのに、2026年2月の閉幕直前には整理券が必要なほどの超混雑状態に。いったい何がここまで人を引きつけたのか? 閉幕前日の2月22日に理系のサキちゃんと一緒に「大ブレークの謎」を考察してみました。
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「あの頃」と「今」のギャップに驚く二人
【2026年2月22日 渋谷・国学院大学近くのカフェ】
エミ:「サキちゃん、見た? 科博の大絶滅展、明日で閉幕なんだけど、Xで『ここ、ディズニーかなにかですか???』って感じで大行列ぶりがトレンド入りしてるんだけど!」
ここ、ディズニーかなのかですか???
— ジンベエー (@NZSjIFiJi8eDWdD) February 21, 2026
サキ:「えっ、ほんと!? 私たちが行った11月も混んでたけど、並ぶことはなくて普通に入れたじゃん」
エミ:「そうよ、あの時と同じ展覧会で今あれだけの行列ができてるなんて……なんかドラマチックだわ。まるで絶滅した生物が後から大繁栄したみたいな」
サキ:「それ、まさに展覧会のテーマの『絶滅後の爆発的繁栄』だよぉ」
エミ:「一体なにがあったのか……理系のサキちゃんならわかる?」
サキ:「無茶ぶり…でも面白そうだからデータ分析してみるよ(カタカタ)開幕直後の11月は割とメディア中心の盛り上がりで、1月から本格的に口コミが爆発してるね」
エミ:「スタートダッシュもすごくて、さらに後半に向けて加速していく100メートル走 金メダリスト型の大ブレークってこと?」
サキ:「じゃあちょっと本気で考察してみようか」
エミ:「いいわね! やろう!」
まず“何が起きたか”を、数字で俯瞰しよう
サキ:「ブレークって言うけど、実は“突然”じゃない。段階があるの。11月1日に開幕して、
12月25日に来場者20万人突破(約50日で20万 1日4000人)
1月18日に来場者30万人突破 (約20日で10万 1日5000人)
っていう、きれいな右肩上がり。
その後、40万人突破のニュースは出ていないけど、このペースがさらに上がっているとすると2月前半には40万人を超えていて、下手するとあした2月23日には50万人に迫っているかもしれない」(※40万/50万は未発表のため推計)
エミ:「動員50万人って展覧会ではなかなか聞かないレベルね。最初の火種はどこ?マーケターの私からすると、福山雅治さんが音声ガイドやナビゲーターを務めてメディア露出が多くて、特に年末の12月29日にNHKで放送された「NHKスペシャル ホットスポット 最後の楽園 福山雅治が進化と絶滅を探る新章」での露出でブーストがかかったって考えちゃうけど」
人気の主因:ひとつ前の「氷河期展」が撒いた“時間差のタネ”
サキ:「それもあるよね。でも、ここが考察の本題。今回いちばん効いたの、“氷河期展→大絶滅展”のリレー導線なんじゃないかって仮説なんだよね。
氷河期展は一緒に行ったけど、同じ科博で2025年7月12日から10月13日まで約3か月間開催されて、動員数は28万人を超えているの。大絶滅展は約4か月間ね」
エミ:「確かに、氷河期展と大絶滅展って、テーマが似ているというか、氷河期展のエピソード0ってイメージが開幕前からあったかも」
サキ:「覚えている?氷河期展で第二会場に向かう途中の廊下で、大絶滅展のチラシが置いてあって、エミちゃんが『これ、きょうの知識が深堀りできそう。絶対行こう』って誘ってきたよね。つまり、科博に行った人が“次の展覧会情報”を手に取る導線が太い」
エミ:「そんなこと言ったっけ?まぁ私はいつもサキちゃんを誘い出しているけど。氷河期展で『当たり』って思う体験をして、出口で『大絶滅展』が刷り込まれる。28万人の口コミ装置が開幕前から稼働していたってわけね」
サキ:「広告っていうより、映画の次回予告編に近いかも」
エミ:「鬼滅方式!マーケティングの教科書に載せていいレベルじゃない? 前の展覧会で次の展覧会への期待を育てる、という設計が見事にハマったケーススタディ」
サキ:「うん。しかも氷河期展の来場者って、元々科学好き・地球史好きの濃い層じゃん。そういう人たちが発信する口コミって信頼性が高いし、同じ趣味の人に響くんだよね」
エミ:「つまり、最初の火はすごく小さくても、燃えやすい素材のところにちゃんと着火してたと」
サキ:「それそれ。生態系の話で言えば、『先駆種(パイオニア種)』がしっかり定着してたから、後から多様な生物が続けて入り込めた、みたいなイメージ。」
エミ:「サキちゃん、また上手いこと言う(笑)」
加速因子:展示が“写真1枚で伝わる強さ”を持っていた
エミ:「でもさ、タネだけじゃここまで行列にならないよね。展示そのものも強いよね?」
サキ:「そこも大きい。私たちのレポでも最初に出てくるけど、冒頭から地球型の球体映像(スフィア演出)で“つかみ”が強いし、シベリア火山(シベリアン・トラップ)を体感させる溶岩流模型みたいに、SNSの1枚の写真でも迫力が伝わる展示だった」
エミ:「確かに、私、サカバンバスピスの顔だけで5分溶けてた……(かわいい)」
サキ:「そうそう。“入口”が多い。ガチ勢は溶岩模型・化石の情報量で刺さるし、ライト層は“かわいい古生物”で入れる。SNSで共有しやすいから、1月あたりに体験談が連鎖すると一気に波が立つ。」
エミ:「展示空間的にも実際に”入口”が多かったのよね。科博の展示って一本道が普通だけど、スフィアを中心に放射状に、5つの絶滅(ビッグファイブ)コーナーに移動できるのは画期的よね」
マニアック過ぎる=「本気度」が伝わる展示が口コミを連鎖
サキ:「次の要因として大きいのが、展示のマニアック度だと思う」
エミ:「それはあるね。SNSの時代にマスに向いた『子供にも分かる』情報って逆に伝播しないのよね。むしろ子供のほうが下手したら情報量は多くて、子供向きにぬるいと子供からそっぽ向かれる」
サキ:「もしかしたら『恐竜絶滅』のテーマだったら、ここまでの社会現象にはならなかったかも」
エミ:「そうそう!恐竜絶滅のコーナーなんて思い切り省略している感じだったよね。でも、ペルム紀末の大絶滅でシベリアン・トラップが犯人って話とか、植物が地上に進出した森が大絶滅を促進した説とか、私は初めて知って震えたわ」
最後に効いた“FOMO(見逃し不安)”:混むからさらに混む
エミ:「で、閉幕前に“駆け込み”が起きる、と」
サキ:「それに加えて、混雑の情報が出ると、逆に火がつくことがある。“整理券”“当日券終了”みたいなワードがSNSで広がった瞬間に燎原の火となった」
エミ:「びっくりしたのが前日の22日に公式がXで『本日、大変多くの方にご来場いただいているため、大絶滅展は20時まで開館延長いたします。※開館時間は20時よりさらに延長される可能性があります』。当日になって1時間延長するだけでなく、さらに会場を閉めるのを夜8時を超える可能性もあるって聞いたことないわ」
サキ:「科博の『俺の研究を聞け!』っていう思いが込められたアンコール的時間延長、伝説になりそう」
エミ:「絶滅展なのに、人気が“自己増殖”していく……」
サキ:「そう、まさにそこが一番面白いと思うんだけど、この展覧会のブームの構造って、展示で語られてる生命史の構造と同じなんだよね」
エミ:「うんうん」
サキ:「大量絶滅の直後って、生き残った種が一気に多様化するじゃん。なぜかというと、それまで大型種が占めていたニッチ(生態的地位)が空いて、そこに新しい種が爆発的に適応放散するから」
エミ:「うん、恐竜滅亡後の哺乳類とか」
サキ:「大絶滅展のブームも同じで、最初は『コアな古生物ファン』というニッチに刺さって、そこが飽和すると次は『サカバンバスピス好きなSNS民』、さらに『科学好きな子ども連れファミリー』、最後は『ブームに乗りたい一般層』まで適応放散した感じ」
エミ:「うわー! まさに展覧会自体がカンブリア爆発してたんだ(笑)」
SNSで特に拡散したのが「95%の生物が絶滅した、それでも地球は終わらなかった」というメッセージへの共感でした。コロナ後の社会で「危機の後の再生」への感度が高まっているのかも。絶滅展が「前向きな絶望」として受け取られたのは、現代の文脈を見事にすくい取っていたからかもしれません。
大絶滅展が“爆発”した理由仮説まとめ
サキ:「私の推論は、こう。
氷河期展(28万人規模)が満足度が高く、その出口で、大絶滅展のチラシなどの予告露出によって“タネ”が撒かれた
タネは科学クラスタや家庭内で熟成して、冬休み以降に発芽
展示(スフィア/溶岩模型/古生物の入口の多さ)のインパクトが強烈で、写真・感想がSNSで連鎖
会期末の混雑・整理券情報がFOMOを生んで、最後に“ピーク波”になった
――つまり、氷河期展が撒いた小さな芽が、口コミと自己増殖で一気に大絶滅展という『森』になったってこと」
エミ:「やだ、サキちゃんの結論、ドラマチック……。“絶滅と繁栄”が展覧会そのものでも起きた、って……」
サキ:「うん。で、次に起きるのは——」
エミ:「まさか……ビッグファイブに続く“第6の大行列”!?」
サキ:「そこは増やさなくていい(笑)」
展覧会のラストメッセージ。『第6の絶滅は人間が引き起こさないように』って問いかけ。エンタメと啓発が両立してる展覧会ってそうそうない、貴重
東京は終わりだけど、名古屋と大阪にも巡回するから、展覧会全体で100万人目指してほしい
巡回:名古屋市科学館3月20日~6月14日 大阪市立自然史博物館7月17日~10月12日
大絶滅展HP(https://daizetsumetsu.jp/)
おまけ:大絶滅展の記憶を思い出すプレイリスト
【エミとサキの大絶滅展プレイリスト】
創聖のアクエリオン / akino
地球最後の告白を / kemu
僕らのミッシングリンク / ウォルピスカーター
Shangri-La / angela
悪魔の子 / ヒグチアイ
命に嫌われている / カンザキイオリ
499秒 / 菅野よう子
BREAK OUT / 相川七瀬
サイレントマイノリティー / 伊藤歌詞太郎
この地球の続きを / コブクロ
サキ:「前回はこんな感じでプレイリスト作ったね」
エミ:「完璧じゃん。じゃあ、今回は1曲ずつ追加しよう」
サキ:「私はYOASOBIの『UNDEAD』」
エミ:「歌詞の『死んじゃいない お前とお前の連鎖 生きているとは変わり続けることだ』って、なんでこれ前回のプレイリストに入れなかったんだろう!」
サキ:「そうだね。じゃあ、エミちゃんの追加曲は?」
エミ:「じゃあ、fripSideの『only my railgun』を」
サキ:「なるほど。『宇宙に舞うコインが描く放物線が決める運命』って歌詞もぴったり」


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