「80・50問題」の20年前 大道珠貴「しょっぱいドライブ」第128回芥川賞

2003年1月(2002年下期)、第128回芥川賞には、大道珠貴さんの「しょっぱいドライブ」が選ばれた。
大道さんは、1966年、福岡市生まれの女性作家。受賞時に30代だったわけだが、「しょっぱいドライブ」の主人公の女性も、34歳。
この女性とつきあっているのが、昔から近所付き合いをしているさえないが小金持ちの60代の九十九(つくも)さん。
つまり30代の女と60代の男の年齢差のある恋物語。

芥川賞選考委員の村上龍は、2つ前の「猛スピードで母は」は絶賛したが、今回は「小説として単につまらない」と両断。池澤夏樹は「前回や前々回の受賞作と重ねて考えてみると、この賞はいよいよ内向的になっている」と批判する。もちろん石原慎太郎も「少なくとも私は何の感動も衝撃も感じなかった」と切って捨てる。

よほどつまらないのかと思って読み始めたが、文章はうまいし、まあまあ面白かった。評価された最後の耽美的なシーンも、なるほど余韻を感じた。
ただ、ストーリーは上の選考委員が書いているように、おもしろくもなんともない。題名も、ひどい。

では、なにが面白かったかというと、現代社会の問題になっている「80・50問題」にぴたりと合わさるからだ。80歳代の親が年金で、50歳代の無職の息子や娘を養っているという社会問題である。
作品発表時の2002年から約20年がたって、このカップル(恋人というよりなんとなく疑似親子)は今も続いていたら、まさに「80・50問題」のまっさかりなのである。
なので、いまこそこの続編が読みたいものだと、思ったからだった。

評価は星3つ 

まとめると

テーマ 恋愛
歴史的テーマ なし
地域 九州

「80・50問題」は作家の橘玲さんが指摘しています。

次は吉村萬壱さん「ハリガネムシ」です。

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