21世紀の芥川賞ぜんぶ読むの5作品目は、
2002年1月(2001年下期)の126回芥川賞を受賞した、長嶋有さん「猛スピードで母は」。
長嶋さんは、北海道・室蘭出身で、漫画などのコラムニスト「ブルボン小林」や俳句では「肩甲」のペンネームも持つ。
シングルマザーと小学生の話
物語の舞台は、まだドリフターズの「8時だよ!全員集合」が放送されていた昭和50年代の北海道。
母子家庭で、男子小学5年生の慎(まこと)が主人公。学5年生の視点で、母子家庭の日常生活を描く。
それだけ。本当にそれだけの話。
祖母が交通事故で亡くなったりもするが、ストーリーとして目新しさや山場もほとんどない。
ただ、小学生の視点で書かれているので、難しい単語などはなく、非常に読みやすい。
「猛スピードで母は」というタイトルはインパクトが強くずっとタイトルは覚えていたが、読んでみると、ますます出オチな感じがした。それだけ、このタイトルはすばらしい。俳句もつくる長嶋さんならではと言える。
芥川賞選考委員の村上龍さんは、シングルマザーを応援する作品として絶賛している。受賞は2002年、両親と子どもという「核家族」が「一般的な家庭」であったのが、だんだんと崩れていく、言い方を変えれば多様化している最中だったからこその高評価だったのだろう。
令和の現在では、単にシングルマザーというだけでは当たり前すぎて、物語性は弱いと感じた。
この感想はデータで裏付けられるだろか。
母子家庭社会の到来を予測?
厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査(旧・全国母子世帯等調査)」では昭和63年(1988年)に18歳未満の子どもを持つ母子家庭(いわゆるシングルマザー)は55.4万世帯だったが、平成12年(2000年)には58.7万世帯で増えてはいるものの、それほどの伸びではない。
それが2012年には82.1万、2011年には123.8万世帯、2016年には123.2万世帯と、昭和に比べて倍増していっている。
少子化が進む中で実数が増えているので、シングルマザーの割合はどんどんと大きくなっていることがわかる。
そういう点では、この作品のあとに増えていくシングルマザーという現象を先読みしていることになり、なかなかするどい社会風刺であるとも言える。
いずれ重松清の「小学五年生」に並び、小学校の教科書などに使われるのではないか(もしかしたらすでに使われているかもしれない)。そう思ってしまうほどに、毒がない、健全な小説なのだ。つまり、面白くない。
まとめると
テーマ 親子
歴史テーマ なし
地域 北海道
評価は星2つ
次は吉田修一さんの「パークライフ」です。
数値の参照元
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/honpen/b1_s05_02.html
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