読み直すマスターキートン 第8話「薔薇色の人生」 2巻の2

第2巻のchapter2(通算8話)は「薔薇色の人生」です。
イタリアの銀行員がマフィアの裏金を横領して、自分は川で死んだことにして保険金もとり、実は名前をかえて、スイスで生きていたという話です。
キートンは、保険会社のオプ(調査員)なので、このうちの保険金詐称を調べて、スイスにたどりつきます。
しかし、この元銀行員を追っているのは、保険会社だけではありません。
むしろ、裏金を大量に盗まれたマフィアが、必死になって追いかけていて、キートンも巻き込まれてしまうのです。

スイスといえば、頭に乗せたリンゴをボーガンで射貫く義賊「ウィリアム・テル(ヴィルヘルム・テル)」。
キートンは、オプのついでに、自分の考古学者としての関心で、地元の図書館にいき、中世のドイツ語で書かれたウィリアム・テルについての古文書の閲覧を申し込みます。

保険のオプの仕事は順調なキートンですが、休講しまくりなために、日本の大学で持っている非常勤講師の座を首になりそうになっています。一コマ分の講師の仕事は年収40万円。でも、「この肩書きが大切でね。学会誌に論文を発表できるし、世界の考古学界の動きを知ることもできる」とキートンは言います。

さらに、ここで重要なキートンの夢が明かされます。

実は、ドナウ河の一地点を発掘したいんですよ。
学会では笑い者にされるでしょうが、あそこにはギリシア、ローマよりも古い文明が存在していたと思うんです。

マフィアからはうまく逃げますが、残念ながら大学の講師は首になりました。
そして、閲覧を申し込んだ図書館から、この本は研究者でないと閲覧できないといわれ、キートンは(首になった)大学の身分証明書を見せます。
すると、邪険な態度をとっていた図書館の職員が、握手を求めて、キートンが書いた論文「エーゲ文明に於ける投げ棒の紋様」を読んだことがあり、「あんな素晴らしい論文、初めて読みました。僕はあれに感銘を受けて、研究者になろうと決心したんです!!」と言ってくれたのです。

頑張れキートン!
と思わずにいられない、そして最後の伏線になる重要な回でした。

*この「読み直すマスターキートン」シリーズは、あくまで、フィクションのマスターキートンに対して突っ込むのが目的ではなく、三十年たって、自分が批判的な姿勢を見につけたのかのおさらいです。

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