今年ほど世界のことを考えた年はない。
パンカジュ・ゲマワット著『VUCA時代のグローバル戦略』( 琴坂将広監訳 / 月谷真紀訳、東洋経済)を読了。
激動の世界で何が変わり、何が変わらないのか。グローバル経営の世界的権威が戦略立案のためのフレームワークを提供する、というもの。
原著はコロナ以前の2018年5月刊行なのだが、すでにトランプ大統領当選(これも近く退陣するわけだが)とブレグジットから、画一的なグローバル化は終わりを告げたとする。(グローバル化を信じてるのが中国のアリババのジャックマーと挙げているのも、コロナ以後では隔世の感がある。)
VUCAとは、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の4つのキーワードの頭文字。この見立ては、全くコロナ後も当たっている。
本書の示すのは、大きく2つあり、一つは【グローバル化を過大に評価しない】こと、もうひとつは【グローバル化自体を止めることは不可能なこと】だ。
矛盾するようだが、世界史の大きな流れでは、ゆっくりとグローバル化が進んでおり、この流れは止められない。
一方で、グローバル経済よりも、各国のローカル経済(そして文化も)のほうが依然として大きく、ローカルを無視した「グローバル経営」はうまくいかないということだそうだ。
本書は、300ページとそれほど厚くないが、定価は3,300円。購入する本はだいたい1000円台、高くても2000円台までがほとんどなので、ちょっと高い出費かと思ったが、日本ではわからない「世界」を知るには、妥当な値段と言えるかもしれない。中国の深センの熱(コロナ前だが)を描いた高須正和、高口康太編著『プロトタイプシティ』(KADOKAWA)と合わせて、読めたことで、グローバル経済(および中国がなぜ強いか)の認識をさらに広げることができた。
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